日本財団 図書館


007-1.gif

Photo.7.9 応力集中率α≒1.45程度(引張り)の荷重伝達型十字継手23)

(10mm板、I形開先、目標溶込み)

(3mm、同脚長10mm)

 

007-2.gif

Photo.7.10 船底のすみ肉溶接と、回し溶接(矢印)

 

007-3.gif

Photo.7.11 上部構造のすみ肉溶接

 

すなわち、I形開先の場合には、溶込みはある程度必要であるが、深くする必要がなく、それよりも止端における応力集中率の影響が大きいことを表している。注意を要するのは、Fig.7.58(c)の(vi)に示したルートの溶込み不良である。この場合の疲労き裂は、ビードの裏面から発生するので、ビード表面に長さ10mm程度のき裂が見出されれば、内部にはその数倍以上の長さにわたるき裂が存在しているとみなして差し支えない。このような溶込み不良は疲労に対して弱いので、溶接条件設定の際に破面試験で溶込みを確認することが望ましい。ブラケット端やブルワークステー端の回し溶接のすみ肉にき裂が発生したときには、ルートの溶込み不足を疑ってみる必要がある。

Fig.7.60(b)は、同(a)を止端応力で整理したものである。比較のためにFig.7.61(b)のS-N曲線を点線で併記したが、前者よりも疲労強度(止端応力)が低い。これは、機関台座その他において、振動に注意を要する部位のすみ肉溶接は、開先加工を行って未溶着部がないようにすることが大切なことを示している。

ミグ半自動溶接における外観上からのビード形状について、良好な例をPhoto.7.10と同7.11に示す。前者は船底の一部で、回し溶接(写真中の矢印)も完全に行われており、後者はπセクションを採用した上部構造の一部で、脚長も適切である。Photo.7.12は、脚長が多少大きめであるが、ビードの外観は良好である。ただ、溶接線交点の手直しが必要で、横向き姿勢の溶接開始時にトーチ角度を少しねかせるようにするのがよい。

Photo.7.13は、最近よく見受けられるビードの例であり、横向き姿勢でトーチを進めるたびに少し止める運棒法を用いると、このような外観となる。脚長と溶込みは良好なので、もう少し止めるピッチを細かくすることが望ましい*7.38。Photo.7.14は、骨組におけるすみ肉溶接不良例であり、初めて建造する場合に時折見受けられる。外観上からいえば、1]アーク長が長く、2]下進姿勢で、3]溶込み不良を生じており、このような場合は初心に返ってやり直す必要がある。

 

*7.38 この運棒法は、教科書には記載されていない。円形運棒ではルートの溶込み不足とビードが過大になりがちなので、これよりは良いと思うが、ピッチが粗いとのど厚が減少する恐れがある。ストレート法が望ましいが、縦の脚長が不足しがちなので、一長一短である。したがって、この運棒法では、ピッチを細かく、ティグ溶接のすみ肉の外観に近付ける努力が望ましい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION