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3. 曲り外板システム

 

数値現図における曲り外板システムは、一般に、外板展開計算システム、外板曲型計算システム、組立治具寸法計算システム、板継仕上マーキン寸法計算システム…などからなる。以下の記述で、「外板」とは「曲り外板」を指す。船底/船側の平板ブロックは、縦隔壁などのパネル・ブロックと同じシステム処理となるからである。

 

3.1 各種の外板展開法と数値計算

作画現図と数値現図を比較する。

 

3.1.1 各種外板展開

手作業による作画現図では、複雑な船体曲面をなす外板を近似的に平面展開する必要から、多くの展開法が考案され、曲り外板の形状、曲り/捻れの強弱によって選択使用されてきた。

これらの近似展開法には、別冊『現図展開』に詳細な説明があるように、従来から基線展開、タスキ/マカネ送り展開などがあり、その他特殊な展開法としては、船底平面からの立ち上がり部分に用いられるロール線展開/キール展開、前後端部の外板にも用いられるステム展開などがある。「キール展開」とは、造船現図指導書シリーズ初出であるが、前章の[図2.1.11 面境界での線接続の変化]に見る船尾部キール板のKL部に『現図展開』で解説した「タンクトップ・マージンプレートの展開」を応用する方法。

 

いずれも長い現図経験から考案されてきたもので、一般性は乏しいが作業は簡単とか、展開精度は低いが曲面のフェアリング精度にとらわれないとか、それなりに現実的かつ巧妙な方法であった。

その後、ほぼ半世紀前に理論的根拠をもった展開法として近似測地線展開が発表され、広い範囲の外板に適用可能であることが判明したことから、この手法は日本での多くの造船所に普及したが、手作業での難点として、綿密な作画作業の積重ねが必要であるにも拘らずフェアネス誤差が累積する問題があった。

 

やがて、外板展開の処理は大手造船所ではほとんどがコンピュータ化され、次に述べる測地線展開法計算の他にも、手作業では展開手順が繁雑でその適用が制限されていたタスキ送り展開の数値化や、更にはコンピュータで初めて適用可能になる接触面展開: 参照[図3.1.1 接触面展開法の原理]なども数値展開法として紹介されているが、従来の展開法と同じ名称でも、各社独自の考案により、かなり異なった数値展開処理となっている。

[図3.1.2 外板部位別展開法]のような展開法選択の知識さえあれば、展開技術そのものは機械化されたのである。

 

 

 

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