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3.2

 

「可燃性物質類―SADTの予測手法に関する研究」調査研究報告

 

株式会社 カヤテック

 

第1章 緒言

 

1.1 調査研究の目的

国連勧告「Recommendations on the TRANSPORT OF DANGEROUS GOODS, Manual of Tests and Criteria」の中に規定されているClass 4.1 Self-Reactive Substances(自己反応性物質:以下SRS)、Class 5.2 Organic Peroxide(有機過酸化物:以下PO)のなかには貯蔵・輸送する際に温度制御を必要とするものがある。国連勧告では、これらの物質に対して管理温度(Controlled Temperature)を定め、輸送等の取扱いを行うことを提言している。

この管理温度を定めるための基準として、国連勧告ではその化学物質自体及び包装状態でのSADT (Self Accelerating Decomposition Temperature)を測定する事を推奨している。

SADTとは、輸送状態で包装品内の化学物質が自己加速分解を開始する最低温度と定義され、本研究では、このSADTを従来の国連方法よりも簡便で且つ短時間・少量・高精度で測定する事ができるとされているARC装置により推定・算出する事を考えている。

当初課題として、委員会より以下の提言がなされている。

1)試料充填方法の定量化、試験実施要領を確立する。

2)試験の小型化をはかる。

3)別途スクリーニング方法を検討する。

これらを中心にして、ARC試験に関する問題点を抽出し,解決して上記提言に対する提案を行うことを本研究の目的とする。

 

1.2  試験概要およびその周辺

SRS及びPOは、その化学構造の内部に僅かな衝撃や熱によって感応を示す化学結合基(例えばアゾ基、ペルオキソ基)を有しており、これらのエネルギーを与えることにより結合部位付近より、分解を開始し、発熱・発火・燃焼場合によっては爆発反応を生じる事が知られている。これらの内で一部の物質は、ある温度下に存置すると、一部分で熱による反応(熱分解)を開始し、生じた分解エネルギー(反応熱)によって更に周囲の物質の熱分解を助長し、ついには「熱爆発」と呼ばれる爆発現象を生じる。このように内部で発生した熱が外部へ放出しきれず物質の温度上昇に使われる現象を「蓄熱現象」と呼び、物質の量が大きくなるほどその効果は顕著になる。特に船で物質を輸送する際、船倉内の物質量は大きく、また倉庫内は、高温度・高湿度の状態となり、「蓄熱現象」を生じ易い。このような状況下で先のSRSやPOを存置すると「熱爆発」を生じる可能性が非常に高くなり、その「熱爆発」を回避するため(同時に品質を保持するため)の手段として、当該物質の温度管理が必要になる。これらのSRSやPOは、先に述べたように熱エネルギーに対して非常に敏感なものが多く、これらのメーカーでは製造工程を含め厳重な温度管理下で取り扱われており、その輸送に際して国内では、陸上では「消防法」、海上では「危険物船舶運送及び貯蔵規則」により、輸送・貯蔵に規制をかけ、法律で安全な運送を心がけるようなシステムになっている。

 

 

 

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