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表4.6.2は、水分値の一次クライテリア(最大粒径6.7 mm)に対応する剪断抵抗係数及び粘着力を示したものである。即ち、荷崩れ数値解析の結果、臨界安全率が1.2となる剪断強度を示したものである。表より、剪断抵抗係数tanφ及び粘着力cの組合せは、tanφ = 0.56 & c = 16.5 kPa 〜 tanφ = 0.26 & c = 28.5 kPaまでの幅があることが分かる。このことから、水分値のクライテリアに対応する代表円錐貫入力がばらつくのは、試験の精度の問題のみならず、複数のパラメータを一つのパラメータで表すことの限界もあると考えられる。よって、水分値の上限に対応する代表円錐貫入力の五つの値に対して、同一の母集団からの(統計学で言う)試料であることを前提とした統計的解析を実施する意味は少ないと考えられる。

 

表4.6.2 水分値の一次クライテリアに対応する剪断強度

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荷崩れ数値解析で用いた試料の密度は、1,550 (Rio Tuba)〜1,830 (Boakaine) kg/m3の範囲であり、剪断抵抗係数や粘着力と比較して、範囲は狭いと言える。よって、試料の密度の違いがニッケル鉱の代表円錐貫入力と荷崩れ危険性の関係に及ぼす影響は小さいと考えられる。貨物の密度を1,700 kg/m3とし、4.3,2節で述べた貨物パイルの形状及び横傾斜角度の条件下で、臨界安全率1.2に対応する剪断抵抗係数と粘着力を求めると、図4.6.1が得られる。図の横軸は剪断抵抗係数(摩擦係数)、縦軸は粘着力である。グラフは密度を1,700 kg/m3とした場合の臨界安全率1.2に対応する剪断抵抗係数と粘着力の組合せ、黒丸は臨界安全率1.2に対応する各試料の剪断抵抗係数と粘着力(表4.6.2参照)、試料名と共に示した数値は、臨界安全率1.2(水分値の上限)に対応する代表円錐貫入力である。図は、臨界安全率1.2に対応する代表円錐貫入力が、剪断抵抗係数と粘着力の組合せにより異なることを示唆している。

 

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図4.6.1 臨界安全率1.2に対応する剪断強度

 

以上に述べた事柄を考慮すれば、「試験により得られる代表円錐貫入力がこのクライテリアを超えれば安全である」という値を設定するのは適当では無い。

そのため、ニッケル鉱荷崩れ評価試験法の目的は、「剪断強度が低いため(荷崩れの危険性があるため)船積みに適さない貨物を判別すること」とする。こうした判定のための代表円錐貫入力のクライテリアとしては、表4.6.1より、安全余裕を見込まず、最大値を丸めて、300 Nとするのが適当である。

 

 

 

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