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4-16.裏書譲渡

 

Q4-16-1:電子式船荷証券の善意取得ということはあり得ますか。

1.日本法において船荷証券その他有価証券の「善意取得」とは、ある者が当該証券を善意・無重過失で取得した場合には、例えその前主(その者に対する裏書人・譲渡人)が違法に船荷証券を取得していた無権利者であった場合でも、当該証券上の正当な所持人としての権利を取得し、反面として従前の正当な所持人(船荷証券を盗難・紛失その他により失った者)の権利は失われる、ということです。商法第519条で準用される小切手法第21条により規定されています。

上記のような意味での「善意取得」は特に国際条約では定められていませんし、実は、諸外国でも必ずしも認められているわけではありません。特に英米法では船荷証券の場合(為替手形等と異なり)否定されており、その意味において、船荷証券は、通常negotiableと言われるto orderの場合でも厳密な意味においてはnegotiableではない32、と言われています。

但し、これはあくまで、占有を失ってしまった従前の正当な所持人と、善意無重過失で取得した現在の所持人の間の優劣という問題であり、裏書の連続した所持人(たとえ途中に無権利者が介在していたにせよ)と運送人の関係(どのような場合に貨物引渡義務があるか・あるいはどのような場合に貨物引渡すれば免責されるか)ということは、また別個の問題です。

2.電子式船荷証券は、船荷証券ではなく、単にEDIを通じて船荷証券と同様の機能を実現しようとするシステムに過ぎませんから、上記で述べたような法的な意味での「善意取得」は、もとよりあり得ません。

3.しかし、電子式船荷証券のシステムにおいても、善意取得と同様の機能を持つ制度を設計することは、論理的には可能であるはずと考えられます。ある者が、何らかの違法な方法で(当該「所持人」の関知しないうちに)、当該「所持人」から自分宛に裏書譲渡をさせ、その後自分からさらに別の第三者に裏書譲渡をしたが、その際裏書譲渡を受けた当該第三者は、善意無重過失であった、という状況において、当該第三者が爾後唯一正当な「所持人」とされ、従前の「所持人」は権利を失う、とすれば良いからです。ただ、本当にそのような制度が妥当か否かは、難しい問題です。

 

32 逆に言えばnegotiableとは上記のような意味での「善意取得」が認められるということを意味するという前提。

 

 

 

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