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コモン・ロー上、この様な意味における権原証券として認められた証券は他にありませんが、船荷証券以外の証券であっても、これが商慣習法によって権原証券であることが証明されるならば、コモン・ロー上の権原証券となりえます。例えば、“to named person or their assigns by endorsement thereon”と記載した倉庫証券による引渡しについて、 これが商慣習法によるものである旨が証明された例があります。[Merchant Banking Co. of London v. Phoenix Bessemer Steel Co. (1877) 5 Ch. D.205.]また、 Mate's Receipt に関連した判例もあります。[Kum v. Wah Tat Bank Ltd.[1971] 1 Lloyd's Rep. 439.]

制定法上の“Document of Title to Goods”の定義について、1979年英国物品売買法は、「物品に関する権原証券とは、問屋法に規定するものと同じ意味である」と規定しています。(第61条第1項)。英国問屋法(Factors Act 1893)は、「権原証券という用語は、船荷証券、埠頭倉庫証券(dock warrant)、 倉庫管理人証明書(warehouse-keeper's certificate)、物品引渡指図書(warrant or order for the delivery of goods)、その他取引の過程において、物品の占有または支配の証拠として、あるいは裏書きまたは引渡しにより証券所持人に対して証券が表彰する物品を譲渡または受領する権限を与えるものとして使用されるすべての証券を含む」と規定しています(問屋法第1条第4項)。また、証券譲渡の方式について、「本法適用範囲内においては、証券は裏書により譲渡するか、または、交付により譲渡しうる慣習ないし明示条項があるとき、あるいは証券が物品を持参人に引渡すべく作成されているときは、交付により譲渡することができる」と規定しています(同第11条)。

制定法上の“ Document of Title to Goods”の定義に該当する証券であっても、これがコモン・ロー上の定義に該当しないものは、これを譲渡しても、譲受人に対する物品の推定的占有移転の効力は生じません。けれども、制定法上の“Document of Title to Goods”の定義に該当する証券は、これがコモン・ロー上の定義に該当すると否とにかかわらず、たとえ譲渡人が物品の所有者(owner)でなくても、問屋法または物品売買法により、「自らもたざる物を与えることはできない(“nemo dat quod non habet”)」(注3)という一般原則の例外として、結果的に物品の権原(title to the goods)を譲受人に移転することになります。(例えば、1889年英国問屋法第2条、第8条、第9条および第10条。 1979年英国物品売買法第25条、第47条。)

 

(注1)Lickbarrow v.Mason事件[(1787) 2 T.R.63]。この事件の判決は、1780年に覆された(reversed)[(1780) 1 H.Bl.357]が、 第2審において、Buller裁判官が貴族院(House of Lords)に“venire de novo"(新陪審招集令状)(注2)を要請した[(1784) 5 T.R.683]。新陪審招集令状を発した貴族院により本事件の最初の判決が回復(restored)した[(1793) 2 H. Bl.211]。

venire de novo (新陪審招集令状):かつて刑事訴訟において、write of error(誤審令状)に基づき、陪審のverdict(評決)に誤りや瑕疵があることを理由に、初めの陪審による評決を否定するとともに、事実陪審を再び行うべく新たに陪審員を招集するようsheriff に命じた令状。 下位裁判所(inferior court)が第一審として下した刑事判決につき、王座裁判所(後に高等法院の王座部)がこの令状を発した。

 

 

 

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