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4.3 観測結果のまとめ

 

海洋は陸上植物とともに人間活動の結果排出された二酸化炭素を吸収し、大気中の二酸化炭素濃度レベルをコントロールする重要な役割を担っている。しかしながら、現在海洋の二酸化炭素吸収量に関しての評価は不確実さが大きく、たとえば将来の二酸化炭素排出シナリオに基づく大気中の二酸化炭素濃度レベルの正確な予測は困難な状況である。その原因として広域における観測データの不足が先ずあげられる。大気と海洋間の二酸化炭素交換は、大気中と海水中の二酸化炭素の濃度(正確には二酸化炭素の分圧)差が、その原動力となり起こっている。したがって、大気中と海水中の二酸化炭素の濃度差により、その海域が大気から海洋への二酸化炭素を吸収する吸収域であるか、海洋から大気へ放出する放出域であるかを知ることができる。本事業は、大気と海洋の二酸化炭素濃度を北太平洋広域(亜熱帯・亜寒帯域)において、観測を実施するものであり、北太平洋における二酸化炭素吸収量をより正確に評価していく上で重要な役割を担っている。

本事業の観測海域では、冬から春にかけて、広い海域で海洋中の二酸化炭素濃度は、大気中の二酸化炭素濃度より低く海洋は吸収域となり、逆に夏は海水中の二酸化炭素が増加して、大気中の二酸化炭素濃度より高くなり、海洋は二酸化炭素放出域となっていることが分かった。通年を通して見ると、東西いずれも亜熱帯域は二酸化炭素を吸収していることが示されるが、東部北太平洋に比べて西部北太平洋の方が、二酸化炭素をより多く吸収していると推察することができた。

今後、このような観測を継続して、時間的、空間的にさらに多くのデータを蓄積していくことが、大気と海洋間の二酸化炭素交換量を明らかにしていくために重要である。

 

 

 

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