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アクセシビリティ対策の推進は、基本的には詳細な規則に拠らず、根底に人権があるという考え方のもとに進められている。しかし、近年、交通事業者の業界ごとの統一的な指針の必要性が認識され、連邦政府のレベルでは任意規定であるコード・オブ・プラクティスが策定された。コード・オブ・プラクティスによる対応は柔軟かつネゴシエーションを基本とした対応である。

交通事業者におけるアクセシビリティ対策が不十分な場合は、表に示したように、利用者からの苦情の申し立てが行われることがある。アメリカ、カナダともに基本的には当事者間の和解による解決が一般的である。問題が解決されない場合には、裁判に持ち込まれることがある。ただし、カナダでは、当事者間で和解に至らない場合、CTA(都市間バスについては運輸省)に申し立てることが可能であり、裁判という手段の前に、専門の調停者が意見聴取、調査を行った上で解決に導く機構が存在する。

両国に共通しているのは、日常生活を送る上での最も基本的な権利として、障害による差別の禁止、交通のアクセシビリティの確保が明確にされていることである。また、公民権法や人権法を基底とした政策的な取り組みは、交通という日常生活の特定の部分における対策ではなく、より包括的に、強力に対応できるという点で、交通のアクセシビリティ確保に大きな力を発揮しているといえる。

わが国でも、今後、交通に限らずバリアフリーに関連する法律などが整備されていくと考えられる。交通事業者と利用者の間でのトラブルについても、それを解決する何らかの窓口が必要になる可能性がある。

 

(2) 日本の制度的な取り組み

 

わが国でも、すでに制度的な支援の必要性が認識されており、具体的には「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(案)」(通称交通バリアフリー法)が平成12年(2000年)2月15日に閣議決定され、鉄道駅等の旅客施設を中心としてバリアフリー化を推進する法律の策定が進められている。運輸省、建設省、警察庁、自治省が連携していることから、旅客施設を中心とした、駅前広場、周辺の道路および車両等に関するバリアフリーが今後、具体化し大きく進展する可能性が高まっている。

現段階では、詳細な内容について述べることはできないが、法案の骨子を表4-2-2に、制度の枠組みの概略を図4-2-1に示した。

 

 

 

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