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4. 細菌の増殖

 

細菌は2分裂という形で増殖します。遺伝子を含む核成分が真二つに分れ、続いて細胞質の分裂が起こり、元の細胞(母細胞)と同一の形質を持った2つの新しい細胞(娘細胞)ができます。1個の細菌が分裂し2つになるまでをその個体の世代(Generation)、分裂から次の分裂までの時間を世代時間(Generation Time)と言います。

細菌は必要な栄養を外部から細胞内に取り入れ、これを分解しエネルギーを得る(異化作用 Catabolism)と同時に、分解素物により自らの成分を合成(同化作用 Anabolism)し、発育・増殖して行きます。異化作用と同化作用のセットを物質代謝(Metabolism)と言います。この代謝に必要な栄養分は全て水溶液、又は澱濁液の形で細胞質膜を通して内部に取り入れられます。栄養分は各種ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等)、炭素源、窒素源、それとビタミンB群の発育素があげられます。石油分解菌は、炭素源として炭化水素を求めるものです。

細菌が発育・増殖するには、その細菌が好む次の4つの物理的環境が必要です。

1] 温度(Temperature)

2] 酸素分圧(濃度)(Oxygen Partial Pressure, Oxygen Concentration)

3] 水素イオン濃度(pH)

4] 浸透圧(Osmotic Pressure)

もちろん、水の存在は不可分です。細菌の多くは広い温度範囲で生存し、増殖します。細菌には最適温度(Optimal Temperature)と呼ぶ発育するのに最も適した温度があります。細菌にも暑がりもいれば、寒がりもいるということです。

酸素濃度については、“好み”は大きく異なります。生存・増殖に酸素を必要とする細菌を偏性好気性菌(Obligative Aerobe)又は、好気性菌(Aerobe)、酸素を必要としないものを偏性嫌気性菌(Obligative Anaerobe)又は、嫌気性菌(Anaerobe)、酸素があってもなくても良いものを通性嫌気性菌(Facultative Anaerobe)と言います。

水素イオン濃度については、pH5〜9の中にほとんどの細菌の最適pHがあります。通常はpH7.0付近の中性を好むようです。

浸透圧は外界の塩分濃度と置き換えて考えることができます。ほとんどの細菌は、増殖に塩分濃度0.5〜0.8%の環境を必要としますが、塩分が3%以上になると増殖はできなくなります。しかし中には10%位の濃度の環境でも増殖できるものもあります。これらの種類の細菌を耐塩性菌(Halotolerant Bacteria)と言います。海水の塩分濃度付近を最も好むものを好塩性菌(Halophilic Bacteria)と呼んでいます。

その他、直射日光(特に紫外線)は細菌にとって多くの場合、致命的です。

 

 

 

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