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それによれば、「国際法に基づく現行の規則」の適用および「新たな規則」の発展を妨げないとあり、つまりは、「新たな規則」が確立したり、個別の規定が別個の責任原則を規定していない限り、国連海洋法条約上の損害についての国家の国際法上の責任は、伝統的な国家責任に関する一般原則の適用によると解される。さらに、国連海洋法条約300条は、権利の濫用を禁止しているので、権利の濫用に該当する場合には、それを根拠とする国家の責任が認定される可能性もある。

2] 個別の部における責任に関する規定

無害通航船舶に対する執行としては、無害でない通航を防止するために、領海沿岸国は、「必要な措置(25条1項)」をとることができるし、排他的経済水域において、沿岸国は、生物資源の開発・利用に関する主権的権利の行使として、法令の遵守を確保するために、「必要な措置(73条1項)」をとることができる。けれども実際の措置が、25条1項や73条1項にいう「必要」の程度を越えたような場合の責任については、国連海洋法条約上、特別の規定は存在しない。したがって、304条の一般的責任規定や慣習法によることになる。

また、263条2項は、国(もしくは国際機関)が、他国、その自然人その他が実施する「科学調査に関して」、「この条約に違反してとる措置(the measures they take in contravention of thie Convention)」について責任を負い、損害を賠償すると規定している。ここでは、国の責任の根拠として、国のとる措置が条約に違反する場合のみを挙げており、232条のように、「違法な措置」と区別して「合理的に必要とされる限度」を越える措置を明記してはいない。したがって、263条2項の適用範囲は、もっぱら条約違反の措置に起因する損害であり、それ以外の措置(たとえば、必要な程度を越える措置や、慣習法に違反するような措置)に起因する損害については、263条2項の適用はなく、304条の一般規定や慣習法の適用をうけるという解任もとりうる。

他方、公海上の外国船舶への干渉とそれに伴う損害に関する責任については、106条と110条に責任に関する規定がある。海賊行為の疑いに基づく

 

 

 

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