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(ロ) 次に、国家賠償法は国内法上の違法な措置により生じた損害の賠償を想定しており、国際法上要求される要件を満たしていないとして国際法上の違法性が国内法上の違法と言えるのかどうか、の問題があろう。

また、先に検討したように、国連海洋法条約第110条(3)にいう公海上における臨検に伴う損害については、その臨検自体は国際法上も適法というべきものであっても、臨検に伴う損害を補償することが要求されているとすれば、これを国内法上も違法ということはできないのであって、国家賠償法に基づく損害賠償制度にはなじまないことになる。むしろ、我が国の国家補償制度が、違法行為に基づく損失補償制度と適法行為に基づく損失補償制度から構成されているとするのであれば、これは、損失補償の制度によって対応すべきものと考えられるからである。

(ハ) もっとも、国家賠償法に基づく救済が与えられない場合には、国内的救済完了の原則は適用されず、国家は、直ちに相手国の責任を追及するための請求をなしうることとされているから、国家賠償法による救済の有無が直ちに国家責任追及の手段の有無に結びつくわけではないと言わなければならない。

 

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(1) 参照、山本草二「ベーリング海オットセイ事件」国際法辞典(1975、鹿島出版会)615頁、高島忠義「ベーリング海オットセイ事件」国際関係法辞典(1995、三省堂)707頁。

(2) Ian Brownlie, State Responsibility p.69 (1983).

(3) The Jessie, RIAA vi p. 57. 英国のスクーナーJessie号外2隻が1909年6月北太平洋の公海上でラッコ漁に従事していたところ、米国の税関監視艇Bear号による臨検を受け、オットセイ保護の共同規制措置として、船内にある武器・弾薬の封印措置を受けたというものである。なお、参照、波多野・東編・国際判例研究・国家責任(1990、三省堂)187頁、田畑茂二郎「国際責任における過失の問題」(1958、横田還暦)p. 371

 

 

 

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