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こう理解すると、旗国によって手続が開始され終了した場合には、それをもって代理処罰によるわが国の法益の確保、回復がなされたものとなり、したがって、沿岸国における手続は不要となり、手続を停止、終了する。ボンド(保証金)も、その担保していた手続が代理処罰によって達成されたから、これを返還することで、問題は生じない。

もうひとつの整理は、沿岸国の管轄権の根拠はやはり排他的経済水域における沿岸国の環境に係る法益であるが、それは、損害が著しいものでない場合は、旗国の管轄権を基礎づける旗国の有する自国船舶の航行の利益を他国によって干渉されない利益に比較して、その価値は相対的に低いから、旗国の管轄権の行使によって国際社会の海洋環境に関する法益の保護が確保、回復されれば、沿岸国の法益の保護と重複する限度で、沿岸国の法益の保護も果たされていることも考慮して、旗国の管轄権と国際社会の海洋環境の保護に優先を認めつつ、旗国の管轄権が機能しない場合に、国際社会の海洋環境を保護する目的を補充的に果たすことができるように、認められたものである、というものであろう。

こう理解すると、ボンド(保証金)は、海洋環境の保護という国際社会の法益を実現する旗国による手続の担保と、旗国の手続が機能しない場合の、沿岸国の法益の確保とそれによって合わせて実現される国際社会の法益の保護とのために沿岸国によって行なわれる手続の担保との、両方の目的を持つものとなる。旗国の手続による沿岸国手続の停止、終了は、優先的な手続が完了した以上、補充的な手続としての性格上、認めざるを得ない。ボンド(保証金)の返還も同様である。

(8) さて以上のように理解すると、まず、代理処罰として旗国の手続を考えた場合、ボンド(保証金)をわが国の現行法が採用しているような手続を確保するための出頭担保金として構成する限り、(2)で旗国の手続に伴って生じる沿岸国手続の執行の停止、終了、ボンド(保証金)の返還から生じる問題として設定した三つの問いに対しては、次のように考えることができる。

 

 

 

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