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る公務員の職務の執行を妨げる行為に係る刑法の罰則規定(公務執行妨害罪、往来危険罪、傷害罪、殺人罪、犯人隠避罪、証拠湮滅罪、被拘禁者奪取罪、逃走援助罪、窃盗罪、器物損壊罪等)及び特別公務員暴行陵虐罪等が含まれる。」という説明(18)がなされている。それは次の様な見解を前提にしたものと思われる。管轄権行使の過程で生じる犯罪への対応について、「従来から議論の対象とされてきた、追跡権行使の過程で行われた公務執行妨害罪に対する域外適用の問題に対しては、刑法総則に手当てをするよりは、個別に対応した方が適当であろう。刑法総則に一般的な国外犯処罰規定を置くことも不可能ではないが、刑法総則に置く場合は外国の領域も含めて国外一般に及ぶことになり、本来必要とされる範囲を越えることになって不必要に主権の張り出す印象は否めないからである。従って、追跡権に関する何らかの規定を置く場合に、あわせて規定するのが望ましい。同様の公務執行の妨害は、排他的経済水域や公海での取締中にも生じるが、それらも、それぞれの個別法や海域に限定された法律のなかに規定される形で処理されるのがよいであろう。(19)」。

さて次に、この「領海及び接続水域に関する法律第3条、第5条(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律3条1項4号)の『我が国の公務員の職務の執行』『については我が国の法令』『を適用する』という文言が、執行根拠法である刑事訴訟法、海上保安庁法などの適用を、領海外に拡張する規定である。ただ、拡張されるのは、国連海洋法条約の定めに従い、領海及び接続水域に関する法律3条では、拡張される海域は外国の領海を除いたすべての海域であるが、継続追跡権の行使の場合に限られ、同法5条では、領海の外12海里までの海域で、通関、財政、出入国管理及び衛生に関する法令に違反する行為の防止及び処罰のための措置をとる場合に限られる(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律3条1項4号では、拡張される海域は排他的経済水域で、1号から3号所定の事項に限られる)(20)。」ということになる。

さて、追跡権の行使については、沿岸国は、その国内法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由のある外国船を公海上まで継続して追跡する権能を認められる。追跡される外国船舶は、公海自由と旗国主義を援用しても、この追跡と取締りを免れることはできないとするものであった。追跡権が旗国主義の例

 

 

 

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