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(in-coming)の船舶あるいは接続水域に所在して徘徊等を行っている不審船については、せいぜいそれら船舶に近接し、疑義がある場合には停船を命令し、書類検査・物理的検査などの立ち入り検査あるいは船内捜索をしたうえで、容疑に十分な根拠があることが明らかになればこれを接続水域の外に「排除」することを限度とするものとされている(1)。停船命令に従わずあるいは近接権の行使に抵抗して容疑船舶が逃走した場合でも、当該外国船舶が接続水域の外に出てしまえば、もともと「必要な規制」の目的が当該船舶を接続水域の外に「排除」することにある以上、さらに追跡することは法的には無意味とされ、したがって追跡は目的を達成して終了するとされる(2)。しかしながら、法令違反の防止がこれにより有効になされるわけではない。一旦、接続水域外に排除されたにせよ、容疑船舶あるいは不審船は接続水域外の公海上で徘徊または停船をして、目的達成の次の機会をねらうはずだからである。とりわけそれら犯罪が組織的に行われる場合にはその可能性が高い。にもかかわらず、わが国海上保安の実務が「排除」をもって規制の限度とするのには、以下述べるような、国際法の解釈および国内裁判実務からくる制約があるからのようである。

(2) 国際法上の沿岸国の権限

まず接続水域における沿岸国の権限に関するわが国の国際法解釈の通説的見解が、国際法は、まだわが国領域に入域しないで接続水域内を徘徊している不審船あるいはわが国に向けて航行中の船舶については、特定の沿岸国法令に違反することを防止するために執行管轄権の行使を認めているにとどまり、接続水域に沿岸国法令の立法管轄権を及ぼすことまでも認めているわけではないとしていることからくる制約がある(3)。この見解は、接続水域があくまで公海であり、海洋秩序が原則として旗国法令の執行によって確保される海域であること、また沿岸国が不当に船舶の国際航行に介入することにより、公海使用の自由を侵害する危険を防止することを重視するものである。しかし、接続水域制度の解釈としては、単に執行管轄権のみならず、沿岸国が立法管轄権を及ぼすことを広く認める見解も存在する(4)。そして接続水域の制度が成立してくる歴史的な沿革、とくに沿岸国が一方的な国内措置とし

 

 

 

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