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シンガポール港運営(株)は、中国の福建省の省都である福州でも、港湾とロジスティクス・サービスを提供するためのジョイントベンチャー事業を起こしている。このケースでは、子会社である Sealion Huanan Pte Ltd.を通して、港湾庁と福州港湾庁の間でジョイントベンチャー契約が締結された。1998年7月3日、港湾庁はFuzhou Qingzhou Container Terminal Co. Ltd.、Fuzhou Qingzhou Warehousing&Transportation Ltd.、 Fuzhou Aefeng Container Service Co. Ltd.の3社を設立し、98年5月からFQCTがターミナルの管理運営を開始した。1997年の福州のコンテナ取扱量は、22万5千TEUで前年比約30%の伸びを示している。福州港は、アモイ港とともに中国―台湾の間接貿易を許可されている中国の2つの港のうちの1つであり、将来的には台湾航路について香港との競合も予想されている。また、港湾庁は南通港湾庁ともジョイントベンチャー契約を結び、コンテナ埠頭や保税倉庫の建設に着手している。

港湾庁は、株式の取得によってイタリアのヴォルトリ(ジェノバ)にも進出している。シンガポール港運営(株)は、フィアットグループの傘下にあるSogespar社と契約を締結し、Sinport社の発行株式の60%を取得した。Sinport社は、ジェノバで最大のコンテナ・ターミナル会社であるVoltri Container Terminal Europa(VTE)の株式の95%を所有している。また、Sinport社はVenice Container Termialを運営しているVecon社の株式53%を取得している。したがって、シンガポール港運営(株)は同社にとってヨーロッパで初めてのプロジェクトであるVTEとVecon社の運営に関わることになる。シンガポール港運営(株)とSinport社は長い期間にわたり提携関係を築いてきた。1991年から、当時のシンガポール港湾庁の子会社がSinport社にコンサルティング・サービスを提供し、VTEの設立に協力したという経緯がある。

その他、南イエメンの首都アデンにおいてシンガポール港運営(株)とYeminvest社との間で締結したジョイントベンチャー契約に基づき、Aden Container Termianlを設立した。このケースでは、97年10月にシンガポール港運営(株)がターミナル運営契約のもとに20年間、ACTを運営することになっている。アデンは、ヨーロッパ市場と東アジア市場との間を結ぶ結節点に位置し、効率的なトランシップ・サービスが必要なためシンガポール港運営(株)のノウハウが活かされると期待されている。

 

3. 過去の港湾政策の流れ

 

1996年1月末日まで、シンガポール港湾庁(PSA)が一元的にシンガポール港の運営と管理を行ってきた。同年2月2日にシンガポール海事港湾庁(MPA) が設立され、シンガポール港湾庁から港湾関連の規制業務を移管された。また、シンガポール港運営(株)(PSAC)が1997年10月1日に設立され、それまでシンガポール港湾庁が担当してきた港湾サービスと港運サービスの運営と管理を移管された。

 

 

 

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