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ところで広東省を中心とする華南圏のコンテナ貨物の流動状況を見てみると(図表II-2-18)、そのほとんど(95%)が何らかの形で香港港を経由している。すなわち、華南圏発着コンテナ貨物の66%が陸上輸送で香港港へ輸送される、あるいは香港港から華南圏に輸送されている。また華南諸港との間で陸上輸送された華南圏発着コンテナ貨物もそのほとんどが内河船を使って香港港との間で運ばれている。華南諸港からダイレクトに海外に発着するコンテナ貨物は比率で見るとわずか5%でしかない。この5%のコンテナ貨物が、前述した塩田港に寄港しているメガ・キャリアによって運ばれている貨物である。この5%の貨物はもともと香港港で取り扱われていたものが、一方で香港港の港湾関連コストの相対的な高さ、香港港までの輸送コスト、交通混雑と、他方で華南諸港湾の港湾関連コストの低さ、当該港湾の管理を行っている地方政府による船社等への各種優遇措置、荷主からの近接性などの理由から、華南諸港湾に流出していったものである。

 

図表II-2-18 香港をめぐる華南圏コンテナ貨物の流動状況(TEUベース)1996年

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出所:図表II-2-3に同じ

 

香港製造業の空洞化とそれとコインの裏表の関係にある華南圏への製造業の集積および中国地方政府によるコンテナ港湾建設と集荷優遇措置により、今後、香港港と華南圏との間の陸上輸送が華南諸港に振り向けられ、華南諸港が海外との間でダイレクト航路を増便・増設させる可能性は十分ありえる。

広東省以外でコンテナ港湾化を進めている中国国内諸港湾は図表II-2-19にあるとおりである。これら諸港湾は施設面あるいは水深面で香港港との間で大きく立ち遅れているが、華南、華中、華北の地元コンテナ貨物を集めつつある。これら諸港湾の多くは香港港等をハブ・ポートとするフィーダー・ポートであるが、一部はトランク・ラインの母船が寄港しつつある。

このように香港港は香港経済の華南圏への拡大=香港製造業の空洞化を背景としてその集荷圏を中国本土に大きく依存せざるをえない体質を持つ一方で、大荷主主導型物流の進展にともなう地元近接港湾の利用傾向の強化とそれによる中国国内コンテナ港湾間競争への否応のない参加を余儀なくされている。

 

 

 

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