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PMBの役割は、一言するならば、民間海運業界の意向を政府に円滑に伝達することにある。委員の数は20名で、その内訳は4名の香港特別行政区メンバーと16名の民間出身のメンバーからなる。16名の民間出身メンバーの中には、香港の地場海運企業や港湾関連企業の代表者等が含まれている。香港の4つの民間コンテナ・ターミナル・オペレーターの代表者等も含まれており、実質上、港湾関連産業に利害関係を持つ諸企業の意見をくみ取り、調整する機関であると言える。

またPMBは下部委員会として港湾開発委員会(Port Development Committee)と船舶委員会(Shipping Committee)の2つの委員会を持っている。前者は港湾およびコンテナ・ターミナルの開発をサポートする委員会であり、コンテナ・ターミナル用地の整備およびその場所等の決定を行うとともに、その実行をMDに委託・執行させる。後者は港湾関係のコスト削減や香港の海運ネットワーク・センター化の維持・強化によって香港海運業の競争力を強化することをサポートしている。

それ以外にもPMBは海運企業の本社機能、あるいは地域統括部門の誘致や大陸中国へのポート・セールス等、香港が海運ネットワークの中心として機能するためのサポートを行っている。

PMBの前身であるPDBは1990年に設立され、政府と民間企業のニーズを調べ、評価し、必要とされる港湾施設を決定するとともにそれら施設の建設・供用に関して責任を持ってきた。

もともとPDBは、香港の中国復帰後も香港に海運・港湾機能が集積し続けるように、香港系の大規模海運・港湾関連企業のニーズを汲み取る組織として発足したという側面が強い。実際、「民間と政府の間の緊密な協力関係が香港港の成功の秘訣である」と言われているように、香港独特のいわば「官民融合」体制が機能してきたのである。

このように見てくるならば、MDは実質上、PMBが策定した港湾計画および法律にもとづいてそれを執行する行政機関にすぎず、港湾の管理・運営に関する意思決定は、個別コンテナ・ターミナルについては民間コンテナ・ターミナル・オペレーターが、香港港全体の開発戦略についてはPMBが行っている。

したがって香港特別行政区政府は「レッセ・フェール政策から中立的産業政策へ」その全体的な政策を転換させてはいるが、港湾行政に限るならば、PMBによる港湾全体の開発計画の策定という形をとることから、既存コンテナ・ターミナル・オペレーターの意向を強く意識した「官民融合型」政策を採用していると言えよう。

 

図表II-2-4 香港港の管理・運営における「官民融合」体制

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