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とくに、平成8年にオープンした港湾局直営のマリーナや緑地の建設により、財政的な負担が急増し港務局の財政状態を悪化している。港務局定款の第24条に従えば、マリーナや緑地の利用料金を徴収することは手続き的に可能である。しかし、行政サービスとして提供されているこれらの施設は街中の公園と同じ旨趣のものであり、その利用について料金を徴収するのは住民感情の点からも難しい。

近年、地方分権を推進する立場から、地方公共団体の広域連携を統括する組織として港務局を提案する論調が一部にある。しかし、日本の港務局制度には財政的な自律性が保証されていないことを銘記すべきであろう。財政的な自律性が保証されてないために、港務局はそれを組織する地方公共団体から独立できない。その結果、港湾投資により地方公共団体の財政的な負担が重くなると、港務局と地方議会の関係も微妙なものにならざるを得ない。港務局が本来備えているはずの管理運営面の機能を十分に発揮させるためには、まず財政的な自律性を保証するとともに、旧管理者との関係、地方議会との関係を再検討する必要があろう。

 

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