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また神戸港の輸入コンテナ貨物が日本の全コンテナ輸入貨物に占める集中度は、これが1%低下すれば、神戸港のアジアからの輸入貨物量は1.218%減少することが分かる。同様の集中度弾力性は、輸出物流においては1.302であったから、輸出においても輸入においてもほぼ同様の競争力の低下に直面している。したがって神戸港の競争力の回復のためには、輸出と輸入を含む港湾経営の全体的変革が要請されている。

 

2) 大阪港の対アジア輸入物流行動

1] GDP比率の動向に左右される水平分業物流

大阪港の対アジア輸入物流行動のフレームワーク(図表I-3-4)は、上に見た神戸港の輸入物流行動に類似している。しかし日本の直接投資が輸入を喚起する確実性は係数のt値で見る限り、神戸港に比べると信頼性が低いうえに、係数の大きさで見ても影響力が少い。そのため大阪港では、水平分業の特徴を示す日本とアジアのGDP比率が、負の方向に弾力的レベルで極めて有意に作用する一方で、それとペアを成す日本とアジアの卸売物価の比率は、作用の方向は良いとしても作用の確実性はほとんど認められない。水平分業に基づく物流創出を支えるこれら3つの要因の連携効果は極めて低く、専ら日本とアジアのGDP比率の動向に大きく依存している。

2] 輸出物流を上回る大阪港の対神戸港競争力

一方、港湾サービスの質が対アジア輸入物流に基本的に作用していない状況は、神戸港のケースに同じである。輸入物流については、港湾そのもののファクターよりも、港湾を取り巻く経済環境が決定的に重要な作用を果たしている。とりわけ日本とアジアのGDP比率が神戸港における作用をはるかに上回って大阪港の水平分業を推進している事実が、大阪港の輸入物流における競争力のソースとなっている。その結果神戸港との関係は、神戸港の輸入コンテナ貨物が日本の全コンテナ輸入貨物に占める集中度が1%低下すれば、大阪港のアジアからの輸入貨物量は2.675%増加している。大阪港の輸出物流における同様の集中度弾力性は2.217(図表I-3-2参照)であったから、神戸港に対する競争力は輸入物流のほうが上回っている。なお1995年の阪神・淡路大震災の影響は、大阪港の競争力を一時的にアップしたが、その程度は弾性値から見て20%程度の増加に止まっていた。

 

(4) 港湾経営の戦略的対応に向けて

西日本を代表する神戸港と大阪港の港湾の現行の行動メカニズムの下では、輸出物流には日本とアジアの経済的諸要因と港湾のサービス要因が並立して機能する状況が現れていたのに対して、輸入物流においては港湾機能がほとんど全く作用せず、もっぱら経済的諸要因が、しかも国際的な水平的分業に基づく機能を果たしていた。

港湾のサービス競争は、輸出物流においては優位な市場支配力を創出するが、それは輸入物流には基本的に何も影響を与えない。

 

 

 

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