第4章 任用
1 任命権者
公務員の任免権は、国王に属する。ブルネイは、かつてイギリスの保護領で、官吏の任免権は、国王大権の一つとされてきたことに由来する。
憲法は、まず、公務員の地位が国王の意向に基づくものであることを宣言している。
「憲法第70条(公務にある者の期間)政府の公務において職を占めている者は、この憲法で別に定めない限り、国王のそれを望む間、その職を占めるものとする。」
さらに、憲法は、公務員の任免権について次のように定めている。
「憲法第74条第1項(公務員の任命) 公務員の任命、配置換え、昇進、免職及び懲戒に関する権限は、ここに、国王に委ねられるものとする。」
この任免権の行使について、憲法第74条第2項は、「国王がその権限を行使するにあたっては、首相、外交官及びその他国王が官報で公示した者に関する場合を除き、人事委員会と協議しその上奏に従うものとする。」とあり、権限の単独行使に制限が設けられている。これは、国王大権の「立憲」君主制度下における変容と見ることができる。
2 採用
(1) 概要
ブルネイでは、日本のような統一試験による公務員の採用は行われていない。
職に空席が生じることに、その職への採用が行われる。採用には、新規採用による場合と既に公務員となっている者からの採用の場合の二つがある。
採用の手続については、「1961年公務員(任命及び昇進)規則」第4条から第35条が定める。
一般公務員の採用に関して、人事委員会が責任を有している。
(2) 資格
初めて公務員となるためには、ブルネイの国王の臣民であること又はその年に成年となる未成年者で臣民として登録される資格を有する者であることが求められる。
その年に成年となり臣民として登録される資格を有する未成年者以外の未成年者で法の適用により臣民となる者は、採用後、成年に足した日から2か月以内に臣民登録を申請することを求められ、申請を行わず又は登録が得られなかった場合は、その職を失う。