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元首 ハサナル・ボルキア国王(第29代サルタン)

内閣 別記

 

(1) 立法

1984年の独立に当たり、従来の憲法を一部修正し独立憲法が発布された。この憲法の特徴は、立憲君主制であり、立法評議会の設置が認められているものの立法議員の全員が国王による任命議員である。しかも1964年の非常事態宣言以降、戒厳令が敷かれ、独立後評議会は一度も開催されておらず、立法手続きは停止されたままで実質上機能していない。国家の統治に関する「法律」「予算」「条約」等の制定は国王の勅令によって行われている。

 

(2) 行政

行政組織そのものは、1府12省を中心に構成され、それぞれの長である大臣からなる内閣が存在する。各省の主要な政策の施行や予算外の経費執行等は国王の裁可が必要とされる集権的な構造となっている。各大臣の権限は制約を受けて概して小さく、形態としては整っているものの各省の独立性は低く、実際の権限は「王宮」に集中している。

このように国王の権限は絶大なものであるが、これを支えているのが単に「伝統的な権威」であるとは断じ切れない。それでは国王はいかにして国民の「信任」を保ち続けているのであろうか。その一つは国王と一般モスレム国民との直接的関係である。伝統的にモスレム国家の国王は、数多くの地方行脚を実行し、国民の陳情や声を直接聞く事を重要な努めとしている。ブルネイでは多岐に亘る要望を村長が取り纏め、国王に直訴状として提出する機構が存在している。また村長を通じて国王から国民へ「喜捨」もなされる。このように、国王から直接「福祉」の提供がなされ、また国民から直接「訴状」を受けるといった「直接統治」が行われていることが、国王の大きな支持基盤となっている。

ブルネイの場合、立法評議会と選挙制度が停止されている事から「民主主義」が行われていないと見られる場合があるが、ブルネイには、「二つの行政機構」が存在しているのである。国政レベルの選挙制度は実在しないが、地方レベルの選挙は実施されている。つまり、村長や部長は住民の選挙によって選ばれ、村長や部長は国王との直接的なパイプラインをもっている事で「専制君主制」ではなく、「サルタン制民主主義」が存在していると多くの国民は認識している。

 

(3) 外交

1984年1月7日にASEAN第6番目の加盟国となって以来、小国としての安全保障、近隣諸国との歴史的結びつき等の理由から、ASEANとの協調を最優先としている。1989年及び1995年にはASEAN議長国として、ASEAN外相会議等の各種

 

 

 

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