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なお、分散剤については、スーパー・タンカーなどによる事故を想定した場合は、投入する量が、輸送方法や費用の面からみて、とても現実的であるとは思えない。

2] カナダ

ロ 沿岸警備隊(太平洋管区)

すぐに現場に到着できるのであれば洋上焼却も可能であるが、流出してから何時間もが経過すると、油への着火が困難となる。分散剤についても同様であり、時間的経過によって粘度が変化し、分散効果が発揮されなくなる。洋上焼却や分散剤の使用では、他の機関等との調整が必要であるので、結果として時間的経過を招来し、事実上の実施が不可能となる。

油防除の方法論としては、洋上での焼却がよいと思われるが、上記の状況を踏まえて考えれば、結論としては、スキマーで回収するなどして、陸上で処分するしかないであろう。

 

3) バイオレメディエーション手法に係るプロトコルの現状

流出油の防除におけるバイオレメディエーションの手法については、国際標準化機構(ISO : International Organization for Standardization)において、2000年以後に標準化しようとする動きがあり、この手法の先進国である米国のNETAC(National Environmental Technology Applications Center)が1993年に作成したEvaluation Methods Manual : Oil Spill Response Bioremediation Agentsの現状について調査したところ、次のとおりであった。

1] 米国環境保護庁(環境対応チーム・センター)

このマニュアルは、現在、我が国ではガイドラインとして扱われており、規則としての取り扱いはなされていない。内容についても、1993年から更新されていない。

2] カナダ連邦環境省(環境技術センター)

バイオレメディエーションの手法については、カナダは独自のプロトコルを持っている。これは、ガイドラインとしてのものであるが、規則では、「適正なガイドラインに従って使用すること」とされているので、実質的に規則のようなものである。我々は、このプロトコルに自信を持っており、現在、NETACが、このプロトコルの内容を取り入れようとしている。(このプロトコルについては、入手できなかった。)

 

(4) まとめ

今回の調査により、物理的な油防除資機材については、両国とも、国から求められる技術的な性能基準が存在しないことが判明した。訪問先の関係者に対し、しきりに技術基準や評価手法について問い合わせるも、逆に、「日本は、なぜそのようなものを定めているのか。油流出事故の状況は千差万別であり、ある基準によって試験をしても、それは、飽くまでもその条件の下での結果であって、何らかの目安にはなるが、規則に定めなければならないほど重要なものではない。また、規則に定めること自体が難しいと思われる。」といったような意見が大半を占めており、我が国との考え方の違いに戸惑いを感じたところである。

また、化学的な油防除資材である分散剤については、両国とも、自己かく拌型の分散剤を対象とした性能試験法が採用されており、また、カナダでは、標準的な試験油が決められてはいるものの、必要に応じてこれを変更するなど、自己かく拌型の分散剤が一般的となっていることや、試験に対する柔軟な思想に我が国との違いを感じたところである。

訪問先の関係者は、そのほとんどが、十数年以上もその仕事に従事しており、我々の質問に対する回答ぶりからは、仕事に対する自信と誇り、また、それを楽しんで行っている様子がうかがわれ、我々も大いに見習うべきであると痛感させられた次第である。今回の調査では、具体的な試験の手法やそれに関係するデータはあまり入手できなかったが、この調査によって得られた両国の油防除資機材に対する考え方は、この事業を実施するうえで大いに参考になるものと思われる。

 

 

 

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