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【基準】

 

4. 従業員への教育(粉じん作業特別規定令69号)

事業者は粉じんの作業者に次のとおり教育を行う。

(1) 呼吸用保護の選択、使用方法及び管理

(2) ポータブル集じん機等の利用方法及び管理

(3) 粉じんに係る疾病及び健康管理

 

【解説】

 

4. 従業員への教育

以下の事項に関する教育を従業員に行うことが望ましい。

(1) 呼吸用保護具の選択・使用方法及び管理

呼吸用保護具のうち、防じんマスク及び防毒マスク(特に指定するもの)については、労働大臣の行う型式検定に合格したものを使用しなければならない。なお、これ等の構造・性能については、日本工業規格(JIS)が定めている。

ア. 呼吸用保護具の種類

 

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FRPのサンディング作業、トリミング作業及びガラス繊維裁断作業は防じんマスクの着用で十分と考えられる。

防じんマスクはその性能によって特級、1級、及び2級に分けられ労働大臣によって検定承認されている。性能は下表に示す。

 

防じんマスクの性能、重量及び視野

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イ. 防じんマスクの選択、使用などに係る留意点

防じんマスクの選択、使用率については、以下の点に留意する。

a. 着用者の顔に合ったものを選択する。なお、密着性の良否を確認する機器もあるので、これらを可能な限り利用し、良好な密着性を確保すること。

b. 作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。

c. 酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、防毒マスク等を使用すること。

d. 着用者に適正な装着方法、使用方法、点検方法等について十分な教育訓練を行う。

e. マスクは、清潔で乾燥した状態に保つ。

f. 作業場ごとにマスクの保守管理を行う責任者を選任し、マスクの適正な保守点検にあたらせる。

g. 予備の防じんマスク、ろ過材その他の部品を常時備え付け、適時交換して使用できるようにする。

h. 取替え式防じんマスクのろ過材は収縮、破損、著しい変形等を生じた場合又は著しい息苦しさや目づまりが認められた場合は交換する。

i. 使用後、使捨て式防じんマスク及び取替え式防じんマスクのろ過材に付着している粉じんを払い落とす場合には、ろ過材の変形や、ろ過材に付着した粉じんが再飛散しないような方法で行う。

j. 使い捨て式防じんマスクは、表示されている使用限度時間に達した場合及び使用限度時間以内でも著しい型くずれが認められた場合は廃棄する。

k. 使用済みのろ過材及び使捨て式防じんマスクは、付着した粉じんが再飛散しないように廃棄する。

ウ. 呼吸用保護具の管理

適正な着用・取扱方法等に関する指導・保守管理及び廃棄管理を行う「保護具着用管理責任者」を選任することが望ましい。

(2) ポータブル集じん機等の利用と管理

粉じん作業の環境をよくするためには、粉じんの発生源からの除去が飛散を防止する最も有効な方法である。

FRP造船所のように発生源が特定できない状況では取扱いが面倒でもポータブル集じん機、又は集じん装置付工具を積極的に利用する。

ア. ポータブル集じん機

集じん機の種類は多種多様であるが、集じん容積、フィルターの種類及び粉じんの透過粒度等の仕様を検討し作業に応じた機種を選定する。これ等の装置は粉じん作業には、常に利用し易いよう整備しておく。

イ. 集じん装置付工具

当工業会の平成8年度の「FRP造船所の作業環境改善のための機器開発」事業で開発したサンディング専用工具がその一つである。工具に吸引口を取り付けFRP粉じんの発生源より直接集じんする。サンディング面が、平面・率面及び曲面において右から左への研削のみならずあらゆる方向からの研削にもその捕集効率を95%以上に向上させて粉じんの作成防止対策に効果的な工具である。フィルターは、再飛散の防止のため紙パック式としてそのまま廃棄する方式である。

集じん機の活用と管理

集じん機の有効活用・機械装置の管理及び集じんの再飛散を防止するためにフィルター、又は紙パック等は常に点検するよう指導し、また粉じんを廃棄する時は、十分注意して取り扱うよう教育する。機器を管理する担当者を選任することが望ましい。

(3) 粉じんに係る疾病及び健康管理(粉じんの有害性、粉じんによる疾病の病理及び症状、健康管理の方法。)

ア. 粉じんによる障害の中で最もよく知られているのが「じん肺」である。

じん肺とは、“粉じんを吸入することによって肺に生じた繊維増殖性変化を主体とする疾病”とじん肺法で定義されている。

粉じんのうちで、比較的粒径の大きなもの(5μ以上)は、鼻・咽喉・気管支等に付着して「痰」となって体外へ排出されるが、微細な粉じん(粒径5μ〜0.1μ)は、は肺の奥深くの肺胞まで入り込みそこに沈着する。これ等の粉じんを長期間吸し続けるとじん肺を発症することがある。じん肺が進んでくると息切れ・咳・痰がでる。もっと進むと息切れがひどくなり、息苦しさ・動悸がする。

近年医学の進歩により、じん肺症状や合併症に対する治療法が確立されつつあるがじん肺にかかった肺をもとにもどす治療法はない。しかし、じん肺は原因がはっきりしている病気であるため粉じんによる障害を防止することによって、防ぐことができる。したがって、適切な粉じん対策をすることが健康管理の基本である。

イ. 木材粉じん作業については、法律の規制は受けないが、のこぎり切断粉じんによる「未杉症」と呼ばれ肺胞過敏症の気管支ぜん息等が発症することが知られているので木材の加工作業時に前記の防じんマスクの着用が望ましい。

 

 

 

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