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2.1 調査

処理実験実施にあたり処理対象である船舶廃水の状況とSCWO技術動向について調査を行った。

 

(1) 船舶廃水

現在、国際条約「MARPOL73/78条約」および国内法「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」により船舶廃棄物の海洋投棄について規制がなされている。

この内、ビルジ排水(油性ビルジ)は油分濃度を15ppm以下にする必要があるが、生活排水については特に規定されていない。

ビルジ排水は型式承認された分離装置にて処理されているが、従来的には海洋環境保全の観点から船舶廃水の排出規制がより強まることが予想され、従来機では困難である界面活性剤により生成する乳化油の除去等が問題になると思われる。船舶上での廃水高度処理を考えた場合、設置面積の制約等から廃水の区別なく一括して処理することが望まれる。以上から、船舶の高度廃水処理装置には以下の要件を満たすことが必要と考えられる。

・ 海洋環境保全に十分な能力を有すること

・ 廃水の発生源に関係なく一括して処理可能であること

・ 振動、揺動の影響を受けないこと

・ 長時間の安定運転が可能であること。

・ 保守、点検が容易であること

・ 小型、軽量であること

 

(2) SCWO

SCWOとは臨界点(274℃、22MPa)を超えた領域の水中での酸化分解であり、有機物の無害化が可能である。文献調査の結果、SCWOの実験例をまとめると表1のようになる。有機物の分解率は反応の条件によって大きく異なるが、100%近い結果例が多数見られ、廃水の高度処理に十分適用できると思われる。

 

表1 SCWO実験例

対象物  有機化合物、塩素有機化合物、下水汚泥等

装置形式  回分式、流通連続式

酸化剤  H2O2、O2、空気

温度  374.4〜650℃

圧力  22.1〜55MPa

反応時間  0.5sec〜270min

装置規模  0.5m/hr(ラボテスト(回分式))〜41.5l/hr(パイロット)

反応器材料  ステンレス材、高Ni材等

 

 

 

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