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4. まとめ

本調査研究により以下のことが明らかになった。

(1) 燃料噴射系の設計及びシミュレーション計算

・ 本調査研究において、燃料噴射弁は極力複雑な機構を避け、1つの燃料噴射弁でプレ噴射とメイン噴射を得る燃料噴射系を開発した。

(2) モデル実験

・ 噴霧写真撮影結果より、本調査研究において開発したプレ噴射を備えた燃料噴射弁は、設計通りプレ噴射からメイン噴射への切り替わりが成り立ち、噴射要件を満たしていることが実証された。

(3) NOx生成濃度への影響度調査

・ E3テストサイクル計測結果より、プレ噴射におけるNOx低減率はTA0411D、TA0411E、TA0411B、TA0411Cの順に大きくなり、TA0411CのNOx低減率は48%となった。さらに、プレハイフロー燃料噴射弁BH・CH・DH・EHでは、ハイフロー化を行っていない燃料噴射弁に対してNOx低減率はほぼ同等に抑えられ、燃費性能を約1%改善し、プレハイフロー燃料噴射弁TA0412BHでは燃料消費率増加なしに40%NOxを低減し、当初の目標を達成した。

・ シリンダ内圧力計測結果(75%負荷)より、燃料噴射弁A(標準)において燃料噴射時期遅延と圧縮比上昇を組み合わせたTR0711Aにおいて生じた、上死点後の圧力変動の谷は、プレ噴射TA0411Cにより補正できており、当初計画した等圧燃焼は、ほぼ達成された。

・ プレ噴射負荷別計測結果より、すべての負荷において、熱発生率曲線から非常に穏やかな着火状態を実現し、プレ噴射時におけるニードルリフトからも、計画した通りのプレ噴射を行うことが確認された。

 

5. 今後の課題

今回のプレ噴射を備えた燃料噴射系の研究開発によって、理想的な等圧燃焼サイクルを達成することができ、当初の目標のNOx低減効果が図られた。しかしながら、プレ噴射量/主噴射量の比率には燃費性能にも、NOx生成低減効果にも最適点が存在するはずであり、今後の研究課題である。また、本燃料噴射系の実用化に向けての信頼性・耐久性を確保するための諸試験が必要である。

最後に、本調査研究の実験に際してご協力いただいた、三井造船(株)技術研究グループ、ならびにゼクセル(株)の諸氏に感謝の意を表します。

 

 

 

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