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2. ヴィエトナム概観

 

2.1 ヴィエトナムの国土と社会

(1) 国土

ヴィエトナムは、北を中国、西をラオスとカンボジアに接し東シナ海に沿って南北に細長い国土を持つ国である。国土の面積は32.9万km2であり、南北間の距離は2,000kmである。平野部は、ハノイを中心とする北部の紅河デルタとホーチミンから南西に広がるメコンデルタの2つが大きく、その2つの平野と中部の狭小な海岸平野地帯以外の全国土の75%は、山岳地帯である。96年現在の人口は7,700万人(96年現在)である。

(2) 民族

人口の約9割がヴィエト族(キン族ということもある。)で、顔つきや体格は日本人によく似ている。ここ3年間の経済発展のおかげで首都ハノイの市民の服装は格段に向上したので、我々日本人が町中を歩いていても現地の人波にとけ込んでしまい、あまり自分が外国人というが薄れてきてしまった。

ヴィエト族は中国文化圏の南端にあり、歴史上儒教を中心とする中国文化や大乗仏教文化を受けたために倫理観やものの考え方、箸を使う食生活等、様々な面で日本と共通点が多い。情緒的なところ(感情が顔にでやすい)や、気配りを大切にするところ、義理・人情に厚いところなど、日本人と似ているところがあり、あるいはかつて日本人が持っていて今は廃れてきてしまったような美意識も持っている。また、一般に向上心が旺盛で勤勉である。(もちろん例外もいる。)このように、あまりに日本人に似ているので、ついつい日本人と同じような行動を期待してしまうが、大陸国として常に異民族の進入を受けてきたという歴史や、社会主義国という国家体制の違いによって、日本人と異なる点も多いことに、逆に気をつけるべきである。即ち、外国人に対する猜疑心は強いこと、自尊心や気性が強いこと、日本人に比べて国家に対する信頼度が低いこと、物事を決めるときには以外に合理的な割り切りがいいことなどは、現地で仕事をし、生活する上では常に念頭におかなければならない。

華僑は既に数世紀を経て同化しつつあるが、推定100万前後と言われ、一部はハノイと北部に住むが、大部分は南部のホーチミン市とメコンデルタに集中している。南部においては華僑の経済活動は活発であり、華僑系の金融機関まであるが、北部においては経済活動の中に華僑の影響は殆ど見られない。

「ヴィエトナムは少数民族の宝庫」と言われるほど少数民族が多く、山間部を中心として約60の少数民族がある。この中には、歴史上、越中部に勢力を持っていた(チャンパ国)チャム族や、メコンデルタに勢力を持っていたクメール人もいる。かつて抗米戦争中には、北部の社会主義政権から南部の民族解放戦線に武器を供給するのに山岳部を経由(いわゆるホーチミン・ルート)して武器を輸送し、そのためには山岳少数民族の協力が不可欠であったことから、現在の越政府は少数民族にはかなり気を配っている。

 

 

 

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