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平成10年12月15日

(社)海外運輸協力協会主催

第4回運輸国際協力セミナー

 

「ヴィエトナムの運輸事情と国際協力の問題点」

前 在ヴィエトナム日本国大使館一等書紀官

運輸省運輸政策局国際業務第二課総括補佐官

池田 直太

 

1. はじめに

 

著者は、1995年3月から3年間、在ヴィエトナム社会主義共和国日本国大使館に勤務し、去る3月に帰朝した。大使館においては経済班に所属し、主に経済協力を担当した。著者自身としては、ヴィエトナムはおろか海外赴任ははじめてであり、大使館、JICA、OECFのスタッフの中で唯一の運輸分野の業務経験者として、果たしていったい何ができるのか、着任当時の不安な気持は今でも鮮明に記憶している。

着任時、大使館経済班には、外務省のヴィエトナム語専門職の総括(有償資金協力担当)と農水省アタッシェ(無償資金協力担当)、通産省アタッシェ(貿易、投資、鉱工業案件担当)と著者しかおらず、著者は開発調査と技術協力を担当することとなった。当時は、外国人向けの住宅が殆ど整備されていなかったり、大使館そのものも仮住まいであったり、またJICA事務所もなかったりと、経済協力の業務というよりも、まず仕事のためのインフラを整えることが、そもそもの仕事であるような状況であった。また、日本の経済協力が端緒についたばかりであって、経済協力の仕組みがヴィエトナム側に理解されていない状況でもあった。しかしながら、大使館をはじめとする外務省やJICA、OECFの方々の奮闘により、この3年間で漸く我が国のODAがヴィエトナム側に理解され始めたように思われる。

本稿では、まず、ヴィエトナムという国の概観と、著者がこの間に経験したことや伝聞したことを紹介しながら、我が国の経済協力の経緯を述べ、さらに我が国の経済協力の今後の方向性や、今後留意すべきと思われる点について著者なりに考えたことを述べたい。著者の不勉強や、ヴィエトナムという社会において客観的資料の入手が困難なことのため、本稿は経験や伝聞に基づいて記述している。したがって、本稿の内容は、やや客観性を欠いているおそれがあり、また、著者の誤解もあるかもしれないことを予めお断りするとともに、読者にはこの点についてご容赦いただくことをお願いしたい。

 

 

 

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