JICA開発調査事業の動向と問題点について(運輸分野を中心に)
平成10年10月29日
国際協力事業団 社会開発調査部 社会開発調査第一課長 貝原 孝雄
1. 開発調査事業の概要
(1) 開発計画の策定と技術移転の実施
開発調査事業は、開発途上諸国の社会・経済発展に資する公共的な事業に係る開発計画等の策定を行なうとともに、その調査の過程において、相手国カウンターパートに対し調査手法等の技術移転を行なうことを目的とする事業である。
開発調査事業の成果の根幹となる調査報告書は、相手国の開発事業の推進に際しての政策判断の資料として活用されるほか、事業の実現化にあたって我が国や、他の援助機関から資金協力や技術協力を得るための必要不可欠な基礎資料として活用されている。
このようなことから、開発調査事業は、開発途上諸国の公的開発計画を実施に移す場合の準備段階にあたるプロセスを担当する重要な事業として位置づけられている。
また、この事業においては、調査の過程において、現地での技術指導、セミナーの開催、我が国での研修の実施を通じて相手国のカウンターパートに対し、積極的に技術移転を行っており、開発途上諸国の人材の育成に極めて重要な役割を担っている。
(2) 調査対象分野及び調査の種類
社会開発分野においては、従来より実施されている総合開発、運輸通信、都市開発、治水・水資源、上下水道、環境等の分野に加え、平成5年度より保健・医療、人的資源開発の社会セクター関連案件や、市場経済化支援のための財政・金融制度改善や公共事業体の経営改善等にかかる調査を実施している。また、環境分野においては大気汚染、廃棄物処理、水質汚濁等の個別案件ごとの対策計画の策定に加え、近年においては、新たに分野横断的視点での都市環境改善計画策定調査も実施している。
また、調査の種類としては、大別すると、市場経済化支援調査、大規模環境調査、地形図作成調査、地下水開発調査、道路・港湾・電気通信等の各セクターにおける長期計画策定を目的としたマスタープラン調査、各セクターの個別事業計画の策定を目的としたフィージビリティー調査、並びに事業実施のための実施設計(詳細設計)調査に区分される。