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ってくれと言ったら、いろいろな無理難題、あるいはお金を吹っかけられてあげくの果てには追い返されてしまったというようなことで、まず、書類をちゃんと持ってこなきゃヴィエトナムでは通用しないんだよと怖いお役人に言われてやった。大使館の外交文書を持ってこいなんてことを最後は言い出して、困っちゃって、外交文書のコピーを持っていったらだめだと言うんですね。しようがないので、通関をする人の書類1枚1枚に全部タイプを打って、これはほんとうであると。私のサインをして、大使館の判こを全部のペーパーに打って、40枚ぐらいサインしたと思うんですけれども、それでやっと港を通関したというようなことがあって、とにかくODAの仕事をやるよりも、まずODAの仕事をやるための仕事をするというような状況だった、おかげさまで、だからヴィエトナムの社会というのはこんなものかというのはたっぷりと味わいまして、そういう点では、いろいろな面からのヴィエトナムが理解できてよかったなと今では思っております。

それで、こんな話ばかりしていてもしようがないので、ちょっときょうは、ヴィエトナムがどんなふうな国なのかということをお話しして、それから日本のODAでどんなことをやってきたんだということを話しまして、最後にちょっと時間があれば、私の経験から、今後こんなふうにあったほうがいいんじゃないかなというような、若干の私の考えをご紹介させていただけたらと思います。

前置きが大分長くなってしまったんですけれども、まず、これがヴィエトナムの地図です。皆さん、この中に何人も知己のある方がいらっしゃって、こんな地図は見飽きているような方がいらっしゃるかもしれませんけれども、知らない方もいらっしゃるかもしれないので、簡単にご紹介したいと思います。

ヴィエトナムというのは、こういうS字型をした国で、こっちが北側で、北に中国があって、西側にラオス、それから南西にカンボジアがあるということで、こっち側が海なんですね。南北が大体2,300キロぐらいありまして、海岸線の長い国でございます。そういう点では、非常に細長くて海岸線が多いということで、日本によく似た地形でございます。平野部は、北部のハノイを中心とするところと、それからメコン川の河口のメコンデルタ、それからホーチミン市のこのあたり。このあたりに大平野があって、あとはほとんど山岳地帯でございます。北部はこのあたりは全部山岳地帯でございまして、この細長い海岸線のところも山が海に迫っていて、平野部は非常に狭いという地形でございます。そういう点でも、非常に日本に似ている国であります。

あと、民族も非常によく似ておりまして、だんだんハノイで生活していると、何となく周りの人たちがあまり外国人に思えなくなってきちゃうところがあって、非常に逆に困りました。例えば、ヴィエトナム人ははしを使って御飯を食べるし、それから宗教的には仏教、あるいは文化的に儒教の影響を受けております。

例えばヴィエトナム語の中でも、年上の人に使う言葉と、年下の人に使う言葉、日本だったら当然違うわけですけれども、ヴィエトナム語の場合も違います。例えば、「こんにちは」と言うときにも、例えば目上の人に言うときには「チャーホン」と言って、同格の人には「チャウヘン」と言うわけです。あと、女性に対しても言葉が違います。この辺も、日本語とはわりあいとよく似たようなバックグラウンドがありまして、そのほかに類似点を挙げていくと限りがないんですけれども、あとは言葉の中で、漢語のバックグラウンドがあるんですね。だから、「大使」というのは「タイスー」と言って、「注意」というのは「チューイット」、「意見」とかは「イーケント」。こういうのは全部バックグラウンドが漢語ですので、全部日本語と似たような言葉になっていました。ですから、仕事で使う言葉というのはわりあいと漢語が多いものですから、何となくボキャブラリーを覚えるのはそんなに難しくない。と言っても、私はあまり語学ができないものですから、あまりできないんですけれども。そういう点、非常に何となく日本人にはなじみがあるかなと。

それから、顔つきも何となく似ています。背格好も大体一緒で、それから最近では、ヴィエトナム人も大分生活水準が上がって、日本人と大体同じような背広を着て、ネクタイを締めるようになっちゃったんで、ほんとうに町の中を歩いていると、外国人という感じがしない。それから、治安もそんなに悪くない。ですから、わりあいとひょこひょこと歩けるんですね。ですから、非常にそういう点ではよかったかなと思います。

ただ、あまり似ている、似ていると思って調子に乗っているとベチャッとやられることが多くて、やはりそれは異民族ですから、いろいろな違う点もございます。日本人というのは、やっぱり外国で暮らしてみると、島国だなと。あまり民族の侵入とかを受けていないですから、あまり異民族に対する猜疑心とか、何とかうまいことをやってお金を巻き上げてやろうとかということはあまり考えないんじゃないかと思うんですね。例えば、100年時計を前に戻して、幕末に異人が来たときだって、そんなにみんな泥棒したりとか、吹っかけて高額にお金をふんだくったという話は、あまり今は聞いたことはない。まあ、報告されていないだけなのかもしれないですけれども、聞いたことがないんですが、ヴィエトナムで暮らしていると、やっぱり少しでも人から多くお金を巻き上げよう。それから、少しでも他人を押しのけても自分がよくなろうという、人と人との上昇指向というのが非常に強くて、そういうのに打ち勝たないとサバイブできないというところがあります。そういう点、やはりなかなか違うのかなと。あるいは、外国人がこうだよと言っても、なかなか信じてくれないところもあります。

 

 

 

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