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対象分野、それから種類については、最近の傾向を言いますと、やはり、92年にブラジルのUNCEDという環境会議が行われましたけれども、その後、非常に環境関係の案件が増えているわけです。それと同時に、今までのハード物から、いわゆる政策支援型、これもロシアの崩壊以降、出てきているもので、市場経済化調査ということで、最初にやったのが、うちの課でやりましたヴィエトナムの市場経済化調査というのをやりました。これは、開発調査と呼ぶよりは、ちょっと開発調査と呼べるかどうかというのは─アカデミックグループというのが、大体2年半やりましたけれども、延べ50人ぐらいがアカデミックグループで、学者さんですね、これがかかわり、それにコンサルタントが、ジョイントベンチャーでソフト系列のコンサルタントさんをやりましたけれども、若干通常の開発調査とはかわったやり方だったと思います。現在でも、私どもの課で、モンゴルの市場経済化と、それからパラグアイの市場経済化。メルコスールの中で、どのようにして、国際競争力をつけて、パラグアイが生き延びていくかというような調査、これは非常に難しいんですけれども、そういったソフト面の調査も増えております。ただし、いわゆるインフラ整備は、歴然としてかなりのシェアを開発調査の中では占めております。

それから、対象地域ですけれども、ロシアの崩壊後、中央アジアとかがどっと増えて、ODAを卒業している国自身が、シンガポール、ブルネイとかアシュレンが、やっとDACのカテゴリーのパート2に移行したということで、JICAもブルネイ事務所はたたみまして、ことしパレスチナ事務所を開設しました。JICAの予算もスクラップ&ビルドで、今54事務所ありますけれども、大体はどこかをつぶさないと、新しい事務所ができないということで、もうブルネイはたたんで、今パレスチナにできたということです。卒業する国というのは、そういったことでなかなか少ないということで、対象国は増えているんじゃないかと思います。

今現在、これは平成9年度ですけれども、63カ国で143件。これは社会開発分野だけですけれども。地域別では、やっぱりアジアが平成9年度で46.9%、平成7年度が48.6%ですから、若干落ちています。そのかわり、アフリカが11.3%から14.7%と伸びていまして、皆様ご存じのように、先々週にチキャット2というのをやりましたけれども、アフリカに対する支援ということも若干あるのかもしれませんが、依然として、アジア地域が多いということが言えます。

開発調査の動向ですけれども、先ほども言いましたように、政策支援型とか、ソフト面に変わっているということと、案件自身が、単独ではなくて、複合型案件というか。環境案件をとってみましても、昔は─そんな昔じゃないですけれども、上水道なら上水道だけの案件で出てきて、結局上水があれば、下水が出てくるのは当たり前なんですが、大体それが切り離されていた。それは、日本の縄張りといいますか、官庁の関係もございますけれども、最近は、やっぱり上下水道で出てくるということで、開発調査でも結構上下水道で、当然厚生省さんと建設省さんとかと一緒に合体してやるというようなことです。

それから、都市交通に関しましても、ここ数年来というのは、総合都市交通というのがかなり出てきていまして、昔はやっぱり、道路なら道路、鉄道なら鉄道ということで、出てきているわけですね。インドネシア、ジャカルタエリアだけ見ましても、私どもの課で、鉄道だけで五、六案件やっています。道路だけでは10件近く、高速道路を含めてやっていまして、大体開発調査をやった後、円借款等で、鉄道だけでも1,000億以上、道路も相当やっています。今まで、はっきり言って総合都市交通ということでやっていなかったんですね。やっと要請がジャカルタの総合都市交通で出てきまして、一応採択になっているわけです。

ご存じのように、インドネシアがああいう状況なので、今すぐ、ジャボクペック・エリアといいますと、人口でも1,000万以上超していますので、相当な、OD調査とかをほんとうにやるのかどうかということがあって。これは、85年にJlCAがジャカルタ圏のOD調査をやりまして、それに基づいて大体今の計画をされています。ちょうどタイミング的には、ある程度OD調査もやらなくちゃいけないというようなことも考えておりますけれども、いずれ始めると思います。そういったことで、かなり案件が複雑化しているということが言えると思います。環境にしろ、そういったインフラ関係にしろ、そういったのが増えている。

あと、当然途上国側も技術的にかなり進んでまいりますので、それと同時に、財政的に赤字というか、非常に財政難に陥っているということもあって、長くもたせるというか、メンテナンス関係─最近でも、トルコとかアルゼンチンで、橋梁のメンテナンスとか、そういった、インプットをそんなにかけないで、ある程度需要に耐え得ることをやっていこうというような関係の案件も徐々に増えていると思います。そういった意味では、新規のものをつくるのではなく、リハビリ、あるいは一部再開発で何とかしのぐとか、そういったことです。つい二、三年前とかは、JICAの開発調査の中でも、将来的には、BOTでやりたいとか、そういったのが、特にインドネシアなどでは、必ずBOTを考えてくれとかありましたけれども、ここに来てやっぱりアジアの─昨年7月以降のタイの通貨危機から、どっと財政難に陥ったということで、やっぱり公共投資ということで、そういった意味では、また円借款なり、そういったことになるのではないかと思います。そういった意味では、JICAの開発調査のF/Sレベルでどんどんまた円借款をやっていくと。

 

 

 

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