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2.2.2 調査地域の現況と将来展望

 

(1) 社会経済現況

4カ国の社会経済は、それぞれの経済開発及び工業化の進展により大きく異なる。ラオス・カンボジアは典型的な農業国であり、タイは国民1人あたりGDPが3,000ドルを越えて中進国の仲間入りをしつつある。

 

(2) 貿易構造

輸出・輸入を通じて指摘できるこの地域の特徴は以下のとおり。

イ) タイの貿易量が地域全体のおよそ85%と支配的。

ロ) 輸出・輸入は地域GDPのそれぞれ30%と43%を占め、貿易に依存する経済構造となっている。

ハ) 主要な輸出・輸入先は、ともに日本、アメリカ、シンガポール。

 

(3) 調査地域の交通動脈

1980年代までは地域を南北に縦断するメコン川が、唯一の交通動脈であるとともに、地域の経済統合の大きな物理的な障害であった。

1990年代に入ると多くのメコン架橋プロジェクトが動き出した。これは東西方向の交通開発を促進するとともに、域内の経済統合を可能にしつつある。

実際1990年代においてはメコン川の交通動脈としての役割は相対的に低下しつつある。例えば、メコン川上流をみると、タイ─ラオス友好橋の開通(1994年)以降、隣接する河川港(Laksi)の荷物取扱い量は大きく低下している。またメコン川下流に目を移すと、カンボジア最大の河川港(プノンペン)の荷物量は漸増傾向にある一方、最大の海港となるSihanoukvilleは著しく荷物量を伸ばして、1995年以降は河川港を上回っている。

 

(4) 開発フレームワーク

調査地域の人口は、UNDPの予測では、1995年の1億5千万人から2020年には2億1千万人になる。一方GDPは、日本外務省の予測によると、1995年の1,720億ドルから2020年には5,650億ドルになる。

 

(5) 域内開発コンセプト(1):都市成長拠点とその連携

域内経済統合が進むと、タイ・ヴィエトナムにはさまれたラオス・カンボジアは両者の草刈り場となるという懸念があるが、それは杞憂となろう。域内経済開発の原動力は都市経済にあり、ラオス、カンボジアが国として小さくても、ビエンチャン、プノンペンは隣接国の都市と比べても十分な競争力を持っている。またLuang PhrabangやSiemreapは国際観光都市として発展する十分な歴史的資産を持っている。

必要なことは、域内16の都市成長拠点を結ぶ従来の南北の交通動脈に加えて東西のつながりも強化して、国境を越えた都市成長拠点の連携と競争を促すことである。このためには交通インフラ整備が肝要であり、都市成長拠点は海に面している

 

 

 

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