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3.2.3 社会的・経済的意義及び緊急性

本計画は、第一義的には世界の科学者の支持のもとに進めていく科学目的の計画であり、人類が共有しうる知的資産である科学に日本が率先して貢献する意義が大きいと考える。

社会が直面する課題に対する意義を考えると、掘削すればすぐにも実用的対策が立てられるというものではないが、国際的な地球科学の進歩、その進展に必要な研究体制の整備とも相まって、このような課題の解決にも結び付くものと考えるべきであることを強調したい。

その前提をおいたうえで、例えば、氷床コア試料に記録されている急激な気候変動が全球的なものであったか?そのメカニズムは何か?という疑問に対する答えがまず明らかになると期待される。これは、現在の比較的安定した気候における地球温暖化の進行が、別の気候モードヘのジャンプを誘発する恐れはないか?との問いにも手懸かりを与えてくれると考えられる。

また、ライザー掘削は、世界で初めてプレート境界面を直接観察することを可能にし、プレート境界の固着・はがれ状態などプレート間地震の準備過程についての理解を増大させる。また、掘削孔に設置した計測器による観測により、地表面や海底での観測では検知できない前兆現象を促える可能性も期待される。こうした諸課題への取り組みの重要性、緊急性を踏まえれば、本計画に緊急に取り組むべきと考える。

 

3.2.4 運用及び研究の進め方

(1)運用体制

深海掘削は、地球規模の科学的な課題を解明するために、世界各海域で掘削を行うものであることから、本質的に国際協力を必要とする。本計画が、過去長期にわたり成果をあげてきたODPを引継いで発展させたIODPの一環として行われることは、評価の高いODPの国際協力の形態を継承するものとして、適切かつ有効である。また、IODPで提案されている二船体制は、3.2.1に示したように、科学目標を最大限に実現するうえで効率的な国際運用体制であると認められる。

ライザー掘削による大深度掘削は、長期間にわたることから、掘削地点の絞り込みに当たっては、科学目標および掘削スケジュールについて世界の科学者から幅広くコンセンサスを得るための国際調整メカエズムを構築する必要がある。これまでのところ、IODPにおける統合的な科学計画については世界の科学者の合意を形成しつつ準備が進められてきたと認められるが、今後は、実際の国際調整メカニズムの構築に向け、より具体的な検討を進める必要がある。

国際的な費用分担については、本計画の成果から日本が受ける科学上の便益が大きいこと、 日本は、地球の変動帯に位置するアジア・太平洋諸国の中心となって、地球内部の研究を先導すべきであることからみて、日本が地球深部探査船を建造することが適切である。また、運用段階において二船の運用費を利用の割合に応じて国際分担する考え方は合理的であると考えられ、その実現に向けて各国に対し一層積極的に働き掛けていくことが重要である。

 

 

 

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