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(1)一般事情
 ペルー共和国は、南米大陸の西部に位置し、北はコロンビアおよびエクアドル、東はブラジルおよびボリビア、南はチリと、それぞれ国境を接し、西は太平洋に面した長い海岸線がある。
 ペルーは、国土を縦走するアンデス山脈の山岳地帯、その西側の海岸地帯、東側の森林地帯の3地帯に分類される。
 国土面積は、1,285,216?2(日本の3.4倍)、人口は2,434万人(96年央)であり、首都をリマ(人口640万人)におく。
 言語はスペイン語が主要言語であるが、この他ケチュア語、アイマラ語も公用語として使用されている。
 人種はインディオ(47%)、混血(40%)、欧州系(12%)、東洋系(1%)から成っている。
 宗教は、カトリック教(89%)が事実上の国教であるが、信仰の自由が認められている。
 ペルーは、1821年にスペインから独立している。
 1990年にはフジモリ大統領が就任し、インフレ抑制、財政赤字を解消する経済政策を発表し、経済再建を図り、一応の成果があがっている。
 外交では、南米諸国との関係強化、特に近年はアジアとの経済関係強化に努めている。
 また、APECへの参加を重視している。
 95年に、エクアドルとの間で国境紛争が勃発したが、現在は沈静化し二国間で最終的な交渉が行われている。
 ペルーの経済は、1980年代、対外債務危機、ハイパーインフレーション危機に見舞われ、経済は低迷したが、ガルシア政権を引継ぎ90年に就任したフジモリ大統領による緊縮財政、規制緩和などの改革により、よみがえり93〜95年にかけて平均8%の高成長を遂げた。
 ハイパーインフレーションも現在では完全に沈静化し、96年の平均インフレ率は11・9%となっている。
 対外債務も、96年に民間銀行、公的機関と債務再構築を終え、長期にわたった過程をほぼ完了している。
 国内財政も、90年には対GDP比で6%の財政赤字を計上したが、緊組財政の効果により94年から財政は、ほぼ均衡または1.5%程度の黒字となった。
 経常収支は、赤字が続いており、96年には前年より改善されたが、97年には34億ドルの赤字を計上しており、今後の課題とされている。
 世銀の推定によれば、1995年におけるペルーの国民総生産(GNP)は、1993〜95年の平均価格で推定すると550億1,900万ドルであり、国民1人当り2,310ドルに相当する。
 1985〜95年の期間に1人当りの実質GNPは、平均年率1.6%(実質)の割合で減少したものと推定される。この期間に人口は、年平均2.1%の割合で増加している。
 ペルーの実質国内総生産(GDP)は、1985〜95年の期間に実質で年平均0.4%の割合で増加し、また1990〜96年の期間には5.0%の増加を達成している。
 実質GDPは、94年には13.1%まで増加したが、95年には7.2%、96年には2.6%と成長率は低減している。
 農業部門(牧・林・漁業を含む)は、1996年にGDPの13.4%を占め、全労働人口の32.4%がこの部門に従事している。
 主要農産物は、米、とうもろこし、ポテトなどであるが、1993年には自給不足のため、192万トンの穀物を輸入している。
 主要換金作物はコーヒー豆であり、95年には輸入収入総額の約5.2%を占めている。
 ペルーは、薬用植物コカの世界的大生産国であり、コカの栽培により不法な薬品コカインを生産して、90年代初期には年間10億ドル以上の不法収入を得ていたといわれている。コカの密輸出収入は、正当な輸出総額を超えていたと推定されている。
 漁業、特にニシンおよびアンチョビーは、ペルーにとって重要な収入源であり、また、魚粉は1995年の輸出総額の13.3%を占めている。
 1990〜96年の期間に、農業部門のGDPは、年平均5.1%の割合で増加しており、このうち漁業部門のGDPは、年平均4.9%の割合で増加している。
 なお、96年の農業部門、漁業部門の実質GDP成長率は、それぞれ5.5%、5.1%を記録している。
 ペルー経済は、農・漁・鉱業が中心であるが、近年における製造業をはじめ、鉱業、水産業などの目覚ましい発展により、主要産業としての農業の比重は低下してきているが、GDPおよび雇用の面から、依然として重要な地位を占める産業である。
 ペルーは、国土面積のうち約56%が森林、約9.6%が牧場、約1.4%が耕地である。
 穀物、酪農品などは、いずれも国内需要を賄いきれず、大きく輸入に依存している。
 主食用の小麦などのほかに、食用肉についても輸入しているが、これは牧場に適した牧草地が不足しているため、食用牛の飼育が極めて限られていることによる。
 ペルーの畜産物で最も重要なのは、食用畜産品よりも、羊毛、アルパカ、リヤマなどの獣毛の生産であり、アンデス中央高原の山岳地帯の各地で畜産が行われている。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業および電力事業を含む)は、1996年GDP(固定価格)の40.2%を寄与し、全労働人口の16.9%がこの部門に従事している。
 1990〜96年の期間に工業部門のGDPは、年平均5.4%の割合で増加しているが、96年の成長率は前年の6.5%に比し1.0%と低下している。
 鉱業(石油を含む)は、1996年にGDPの8.4%を寄与し、全労働人口の2.5%がこの部門に従事している。
 ペルーは、豊富な鉱物資源に恵まれており、古くから鉱業国、特に貴金属産出国として知られている。
 金属鉱業は、ペルーの重要な外貨収入源であり、基幹産業として重要な地位を占めている。
 主要輸出鉱産物は、銅(95年輸出総額の19.8%)、金、銀、亜鉛、鉛などの金属および石油である。
 銅および銀の生産は、それぞれ世界の第6位、第2位を占めている。
 1990〜96年の期間に、鉱業部門のGDPは年平均2.8%の割合で増加しており、96年の実質GDPの成長率は2.6%を記録している。
 製造業は、1996年にはGDPの22.2%を寄与し、全労働人口の10.4%がこの部門に従事している。
 製造業の主要分野は、食品加工、石油精製、織物および衣類、化学品、機械類および輸送機器、金属、飲料などである。
 1991〜96年に、織物および衣類、石油精製および非金属鉱物工業は着実な成長を遂げたが、製紙および魚粉は厳しい変動を蒙った。
 1990〜96年の期間に、製造業のGDPは年平均5.1%の割合で増加し、96年は2.5%の実質成長率を記録している。
 ペルーのエネルギーは、主として国内の石油および水力発電である。
 住民への電力供給は、1990年には45%であったが、97年には約68%に供給できることになった。
 96年の輸入総額の約9.3%が、石油およびエネルギーの輸入に費されている。

 

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