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(1)一般事情
 ベネズエラ共和国は、南米大陸の北端に位置し、北はカリブ海に面し、東はガイアナ、西はコロンビア、南はブラジルと、それぞれ国境を接している。
 国土中央部にはオリノコ川流域のリャノと呼ばれる大平原、南東部はギアナ高地の西斜面にあたり、北西部には南米第一のマラカイボ湖があってベネズエラ湾と通じている。
 国土の全域が熱帯に属し、低地は酷熱の不健康地であるが、高地は冷涼で住民が多い。
 雨期(5〜11月)と乾期がある。
 国土面積は912,050?2 (日本の2.41倍)で、人口は2,194万人(96年央)であり、首都をカラカス(首都圏人口278万人)におく。
 人種は混血66%、白人22%、黒人10%、インディオ2%から成り、国民の98%が公用語のスペイン語を日常使用している。
 宗教は、全人口の殆どがローマカトリックである。
 ベネズエラは、1811年にスペインより独立、1830年に大コロンビア共和国より分離し、ベネズエラ共和国として独立した。
 1958年に民主制に復帰し、以降選挙により大統領を選出している。
 外交関係では、アンデス共同体とメルコスール(南米共同市場)との統合など、中南米の経済統合に積極的である。
 ベネズエラの経済は、1996年は金融危機や通貨政策の混乱(為替変動相場制導入、為替暴落)等で不振に喘いだが、97年には大きく持ち直した。
 96年央のIMFの支援受け入れを契機として、経済環境が好転し、外資調達も順調になり、国内投資が活発化、建設部門や石油部門が大きく伸びる一方、消費需要が高まった。
 金融政策は、通貨高(97年末で20%高)を維持し、実質金利を抑え、外資準備を増やすなどで、インフレの鈍化に寄与した。
 97年は、マクロ指標は好転し、出超傾向も変わらず経常収支も黒字続きであるが、石油価格の低下の98年への影響が懸念材料となっている。
 世銀の推定によれば、1996年の国民総生産(GNP)は、94年〜96年の平均価格で計算すると673億3,300万ドル、1人当りでは3,020ドルに相当する。
 90〜96年の期間の1人当りの実質GNPは年平均0.3%の割合で減少しており、人口は年平均2.2%の割合で増加している。
 実質国内総生産(GDP)は、1985〜96年の期間に年平均2.7%の割合で増加しており、96年は1.6%の減少、97年は5.1%の増加を記録している。
 農業部門(牧・林・漁業を含む)は、96年GDPの4%を寄与し、労働人口の13.2%がこの部門に従事している。
 ベネズエラの農業部門は、他の発展途上国に比べ、経済に占める比重が低いのが特徴である。
 国土の約20%が農耕地・牧草地として利用されている。主要国内向け作物として米、とうもろこし、ソルガムなどは順調な伸びを示しているが、砂糖きび、綿花などは減産となっており、輸出向けであるコーヒー、ココアも伸び悩んでいる。
 主食となる農作物のうち、小麦の自給率は僅か2%に過ぎず、国内消費分の殆どを輸入に依存している。
 石油産業が発展するまでは、ベネズエラは単なる農業国で、コーヒー、ココア、食肉などが重要な外資獲得源であったが、工業化の促進と共に農業人口は減少し、農業は低迷化している。
 農業の停滞は、食糧生産が人口の増加に追いつかず、輸入に依存せざるを得ない産品も多くなっている。
 牧畜業は牛、豚、羊、山羊などの飼育が盛んである。
 林業は、国土の半分が森林であり、杉、マホガニーなどの良質の木材を産出するが、インフラ整備が遅れており、開発は進んでいない。
 農業部門のGDPは、1980〜90年の期間に年平均3.0%の割合で増加、90〜96年の期間に1.1%の割合で増加している。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力事業を含む)は、労働人口の23.6%を雇用し、この部門の生産がGDPに占める割合は47%に達している。
 工業部門のGDPは、1980〜90年の期間に年平均1.6%、90〜96年の期間に年平均3.1%の増加を記録している。
 鉱業は、労働人口の僅か1%を雇用しているに過ぎないが、95年GDPの15.4%を寄与している。
 原油生産はベネズエラにとって最も重要な産業であり、95年の生産量は世界第7位を占め、95年輸出総額の76.4%を占めている。
 ベネズエラの原油確認埋蔵量(1997年1月1日現在)は、648億7,800万バーレルであり、世界第6位を占めている。(オリノコ石油地帯は含まない)アルミニウム、鉄も重要な輸出産品である。
 このほか、天然ガス、金、ダイアモンド、銅、水銀、鉛、ボーキサイト、ニッケル、クローム、マンガン、その他各種鉱物資源に恵まれているが、実際に生産されているのは鉄鉱石、金、ダイヤモンドおよび一部の非金属鉱物のみである。
 96年の原油生産量は、295.8万バレル/日であり、これは世界原油生産量の4.7%に相当し、世界第8位の生産国となっている。
 なお、オリノコ川流域には、埋蔵量1兆2,000億バレルといわれる超重質油が発見され、現在その開発が進んでおり、ベネズエラの原油生産は大きく飛躍する見込みである。
 鉄鉱石は、南米ではブラジルに次ぎ第2位の産出国であり、推定埋蔵量は28億トンで、その80%が高品位とされている。
 鉄鉱石の生産量は、95年は2,342万トン、金は3,287?、ダイヤモンドは40万カラットである。
 ボーキサイトは、97年の推定生産量は560万トンであるが、その埋蔵量は2億トンと確認されている。
 天然ガスは、95年の生産量が1,626ペタジュールであり、推定埋蔵量は約100年の採掘が可能といわれている。
 IMFの推定によれば、鉱業部門のGDPは1950〜95年の期間に年平均5.9%の割合で増加し、95年の成長率は4.9%を記録している。
 ベネズエラの製造業は、世銀の推定によれば1996年のGDPの18%を寄与し、労働者の13.6%がこの部門に従事している。
 製造業の重要分野は、精製石油、石油化学品および石油製品、金属(主としてアルミ銑鉄および鋼鉄)、自動車などである。
 ベネズエラの基幹産業は、低廉な原材料を利用した鉄鋼、石油化学、アルミなどであるが、消費財では食品、飲料などの生産が伝統的に行われているが、近年では自動車部品の製造および組立て、タイヤ製造も有力な産業となってきている。
 エネルギーは、国内産の石油、石炭および水力発電により供給されている。

 

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