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(1)一般事情
 ブラジル連邦共和国は、南米大陸の北西部に位置し、その国土面積は851万2,000K?(日本の22.5倍)で、南米で最も広く、世界でも第5位の大国である。
 北はベネズエラ、コロンビア、ガイアナ、スリナムおよび仏領ギアナ、西はペルーおよびボリビア、南はパラグアイ、アルゼンチンおよびウルグアイと、それぞれ国境を接している。
 人口は約1億6,398万人(1996年央)で、首都をブラジリア(人口約167万人)におく。
 人種は欧州系(55%)、混血(38%)、その他アフリカ系、東洋系から成っている。
 言語はポルトガル語が公用語として使用されており、宗教は住民の約90%がカトリック教徒である。
 気候は、アマゾン盆地の熱帯雨林気候の高温多雨から、中部および南部高地のサバナ草原地域の亜熱帯気候へと変化に富んでいる。
 ブラジルの内政は、1985年に21年間にわたる軍事政権から民政移管しており、現在は、95年に成立したカルドーゾ政権の下で国家の近代化、経済開発の促進、社会正義の実現を政策目標とし、当面、マクロ経済安定化に不可欠な政治経済制度の改革、民営化等が推進されている。
 一方、外交ではグローバルで活発な外交を基本とし、近隣諸国、米国・EU・日本の世界枢軸、アジア、アフリカ等との多面的な外交を展開している。
 ブラジルの経済は、1960年代後半には「ブラジルの奇跡」と言われたように、途上国経済の中でも特に急速な成長を遂げた国の一つであった。
 特にオイルショックを迎えた1974年までその成長率は二桁台を維持し、結果的に1965〜80年の平均成長率は、オイルショック時を含め9%の高成長を遂げている。
 しかし、1982年頃より始まった対外債務危機によりブラジル経済は急速に失速することとなり、1980〜93年の平均GDP成長率は1.5%という減速された経済成長であった。
 その後、93年には景気も回復し、さらに94年のインフレ抑制策によりインフレも沈静化され、再びブラジルGDPは成長局面に転じ、3〜4%の安定的成長を続けた。
 97年は、年末にアジア通貨危機の影響を受け、レアルは30%下落し、株式市場からの外資の引き揚げなどを招いたため、歳出の削減、金利の引き上げ(実質年利35%へ)などの緊急施策を施行した。
 一方、経常収支の赤字も大幅に増えており、92年には63億ドルの経常黒字を計上していたブラジル経済は、政府がレアル高政策を維持している影響もあり、96年には200億ドル以上の赤字を計上し、対GDP比でも約3%の赤字となっている。
 また、ブラジルは世界でも例を見ないほどのインフレを80年代後半から90年代前半にか けて経験しており、ブラジル経済の投資、貿易に悪影響を与えてきた。
 1994年には2,500%を記録したハイパーインフレーションも95年には77%となり、97年には10%以下となっている。
 対外債務は、依然巨額かつ増大を続け、96年には1,790億ドルを記録、債務返済比率は輸出の伸び悩みもあり、96年は40%を超えている。
 世銀の推定によれば、1995年におけるブラジルの国民総生産(GNP)は、1993〜95年の平均価格をベースにして計算すると、5,797億8,700万ドルであり、1人当りでは3,640ドルに相当する。
 1985〜95年の期間の1人当りのGNPは、実質で平均年率0.7%の割合で減少している。
 この期間にブラジルの人口は、年平均1.6%の割合で増加している。
 ブラジルの国内総生産(GDP)は、1985〜95年の期間に、実質で年平均1.5%の割合で増加し、96年の成長率は3.0%を記録している。
 農業部門(牧・林・漁業を含む)は、1995年には労働人口の24.5%を雇用し、GDPへの寄与率は11.4%を占めた。
 主要換金作物は、大豆(1996年には輸出収入全体の9.5%)、コーヒー(同4.8%)、タバコ、砂糖きび、ココア豆などである。
 その他、小麦、とうもろこし、米、ポテト、カサバ、ソルガムなどを生産している。
 ブラジル産の大豆が世界生産量に占める比率は約25%であり、ブラジルの有力な輸出商品となっている。
 コーヒーは、ブラジルの代表的な輸出商品であるが、近年は世界の生産量に占めるシェアは低下している。
 牛肉および家禽類の生産もまた重要である。
 牧畜業では、牛をはじめ家畜の飼育が盛んであり、畜産は農業生産総額の約40%を占める重要部門となっている。
 ブラジルの林産物(丸太)生産は、世界でも第4位に達しており、林産物(副産物を含む)輸出は、年率約40%の割合で伸びており、林業分野は外貨獲得に大きく貢献している。
 1985〜95年の期間に、農業部門のGDPは、年平均2.3%の割合で増加しており、95年の成長率は5.9%を記録している。
 工業部門<鉱業・製造業・建設業および電力業を含む)は、1995年にはGDPの31.4%を寄与し、労働人口の19.9%がこの部門に従事している。
 工業部門のGDPは、1985〜95年の期間に年平均0.5%の割合で減少しているが、94年、95年にはそれぞれ7.1%と2.0%の増加を記録している。
 ブラジルは、世界的な埋蔵量を有する鉄鉱石、錫などをはじめ、鉱物資源に恵まれた国である。
 広大な国土を有するブラジルは、鉱物資源は既知のものだけでも鉄鉱石、ボーキサイト、マンガン、プラチナ、ウラニウム、金、銀、銅、ニッケル、石炭、燐鉱石など豊富な埋蔵が確認されている。
 また、1990年には、世界最大規模と推定されるニオビウム鉱床がアマゾナ州で発見されている。
 しかし、鉱物資源開発については、各種インフラ整備に莫大な資金を要するため、まだ開発が十分に進んでおらず、鉱業のGDPに占める比率は、僅か1.0%(95年)に過ぎない。
そして、鉱業生産の80%以上が鉄鉱石、原油、石炭、マンガン、ボーキサイト、石灰石、花崗岩などによって占められている。
 現在、鉄鉱石およびボーキサイトは、ブラジルにとって特に重要な鉱物輸出品となっている。
 ブラジルは、鉄鉱石の生産が世界第2位、ボーキサイトの生産が世界第4位となっている。
 なお、錫鉱の推定埋蔵量は世界最大規模の約60万トン、石油の埋蔵量は約41億バレルといわれている。
 製造業は、1995年のGDPの20.6%を寄与し、労働人口の12.4%がこの部門に従事している。
 製造業のうち最も重要な分野は、織物および衣類、食品加工、機械類および輸送機器、木材、砂糖、化学品などである。
 鉄鋼の1995年の生産高は銑鉄2,500万トン、粗鋼2,500万トンに達している。
 また、原油産出量は3,300万トン、天然ガスは180ペタジュールに達している。
 製造業は、1995年GDPの20.6%を寄与し、労働人口の12.4%がこの部門に従事している。
 ブラジルにおける全エネルギーの32%(1995年)は電力(うち93%は水力発電)、30%は石油、18%は木材・木炭、12%は燃料用アルコールに依存している。その他のエネルギー源は、石炭および天然ガスを含め、全体の8%を占めている。
 ブラジルは、巨大水力発電(213,000MW)のダム開発プロジェクトを計画しているが、このうちItaipu水力発電ダム(12,600MW)建設プロジェクトが実現すれぱ、国内全電力需要の35%の供給が可能となる。
 1995年における燃料輸入は、国内石油生産が拡大基調にあるため年々減少し、商品輸入総額の10.3%(91年は26%)に止まっている。

 

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