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(1)一般事情
 チリ共和国は、南米の太平洋岸に沿った世界一の細長い国(南北4,300?、幅150〜200?)で、北はペルーおよびボリビア、東はアルゼンチンと、それぞれ国境を接し、南はマゼラン海峡に面している。
 アルゼンチンとの国境沿いには、南米大陸を縦断するアンデス山脈が走り太平洋岸沿いにはアリカからタイタオ半島近くまで海岸山脈が縦走し、二山脈の間の中央部は縦谷地帯をなしている。
 アンデス山脈中には、南米第一の高峰アコンカグア山(海抜7,023m)をはじめ、6,000mの高峰が多数そびえ立っている。海岸山脈は高くても2,000mと比較的低い。
 縦谷地帯は、北部は鉱物資源に富む砂漠地帯、中央部は肥沃な平野、南部は農牧地帯をなしている。
 チリは、日本と同様に火山の多い国で、地震多発国としても有名である。
 国土面積は、756,629?2(日本の2.0倍)で、人口は1,446万人(96年)であり、首都をサンティアゴ(95年央の人口423万人)におく。
 人種は、スペイン系75%、その他欧州系20%、インディオ系5%から成っている。
 言語は、スペイン語が主要語として使用されている。
 宗教は、全人口の88%がカトリック教である。
 気候は北部は雨が少なく、砂漠をなし、中部は地中海式気候で夏は高温少雨、冬は温和で雨が多い。南部は寒帯に属し、多雨で大森林におおわれている。
 チリの内政は、中南米随一の安定経済を背景に政権、政情共現状は安定している。また、民主化の定着も概ね順調に推移している。
 対外的には、NAFTA加盟の正式交渉権を得た一方、96年央にはメルコスール(南米南部共同市場)と自由貿易協定を締結、APECにも正式に参加するなど多角的経済外交を推進している。
 チリの経済は、70年代はじめに、それまでの国家主導型産業育成政策から、民間主導、開放経済へと政策を転換し、その後80年代初めの債務危機を克服している。
 85〜95年の10年間中南米で唯一、平均成長率6.4%、91〜97年は7.0%という高い持続的成長を達成し、現在最も経済状況の良好な国となっている。
 チリは貿易依存度が高く、通貨危機にあえぐアジアの動向が97年末頃から貿易、金利、通貨などの面で影響を及ぼし始め、98年の経済は成長鈍化の見通しとなっている。
 世銀の推定によれば、95年の国民総生産(GNP)は、1993〜95年の平均価格で計算すると、591億5,100万ドルで、1人当りでは4,160ドルに相当する。
 1985〜95年の期間における1人当りの実質GNPは、年平均6.1%の割合で増加し、この期間の人口は年平均1.6%の割合で増加している。
 1980〜90年の期間における国内総生産(GDP)は、年率4.1%の割合で増加し、1990〜95年の期間では7.3%の割合で増加している。
 94年、95年の実質GDPの成長率はそれぞれ4.2%、8.5%を記録している。
 農業部門(牧畜業、林業、漁業を含む)は、95年GDPの8.1%を寄与し、労働人口の15.7%がこの部門に従事している。
 チリは、かつては小麦輸出国であったが、現在では小麦・肉類などは内需を賄いきれず輸入に依存している。
 これは、耕地および牧草地が十分利用されていないうえ、農業技術・生産性の低いことが起因している。
 主要農作物としては、小麦、オート麦、大麦、米、大豆、とうもろこし、砂糖きびなどがある。
 果物や野菜は、南半球に位置する地の利を生かして、収穫時期の異なる北半球各国への輸出拡大が期待されている。
 チリは、果物および野菜の主要輸出国であり、1995年の果物および野菜の輸出は、輸出総額の約9%を占めている。
 また、近年はワインの生産・輸出が盛んになっている。
 南部地方では、牧羊が行われている。
 森林地帯は約880万ヘクタールで、ユーカリ、ポプラ、松などを産出し、木材および木製品は、魚類とともに重要な輸出品となっている。
 1985〜95年の期間における農業部門のGDPは、年平均6.5%の割合で増加しており、94年、95年の成長率はそれぞれ8.4%、5.6%を記録している。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力業を含む)は、95年GDPの32.9%を寄与し、労働人口の26.1%がこの部門に従事している。
 1985〜95年の期間における工業部門のGDPは、年平均6.7%の割合で増加し、94年、95年の成長率はそれぞれ2.8%、6.9%を記録している。
 鉱業は、1995年にGDPの7.9%を寄与し、労働人口の1.8%がこの部門に従事している。
 チリは鉱物資源に恵まれ、チリの鉱業は国際的にも高く評価されている。
 チリでは鉱業の歴史が経済の歴史と言われるほど重要な地位を占めてきた。
 一方、チリは長年、鉱業(特に銅)に頼り切る輸出構造から脱することを目指し、事実その割合を減少させることに成功してきたとはいえ、依然銅が輸出総額の40%を占め、銅の世界価格がチリ経済に大きな影響を与えていることには変りない状況である。
 銅の埋蔵は、北部地方のChuquicamataおよびEl Teniente銅鉱山に集中しており、確認埋蔵量は世界埋蔵量の約23%を占めている。
 チリは世界最大の銅産出国(96年約250万トン)であり、銅輸出国でもある。
 銅(銅鉱および精錬銅)の輸出は、かつては輸出総額の約88%を占めていたが、現在では約40%に低下している。
 このほか、金、銀、鉄鉱、硝石、モリブデン、マンガン、鉛、石炭なども産出し、これらの輸出は95年輸出総額の50%を占めている。
 石油および天然ガスは南部で採掘されている。
 製造業は、1995年にGDPの16.8%を寄与し、労働人口の16.3%がこの部門に従事している。
 製造業で最も重要な分野は、付加価値額からみると、食料品(製造業全体の17.1%)、非鉄金属(同13.9%)などである。
 1985〜95年の期間に、製造業のGDPは年平均7.0%の割合で増加しており、94年、95年の成長率はそれぞれ2.9%、6.5%である。
 製造業の主要分野は、食品・飲料・タバコ部門であり、輸出産業として重要な果物・野菜缶詰業、水産加工業、ワイン製造業などが発達している。
 非鉄金属産業の主要分野は、チリ最大の外貨収入源である銅鉱石、その他鉱石の精錬・一次加工である。
 製紙部門では、豊富なパルプ資源が注目されており、日本企業も進出している。
 政府の経済自由開放政策と財政健全化政策により、国営企業は年々減少しており、民営化された企業の中には、公共事業的な色彩の濃い分野も含まれている。
 現在の主な国営企業としては、銅鉱業のCODELCO社、石油のENAP社、石油精製のPETROX社などの資源関係や、港湾、郵便、放送、鉄道の分野に及んでいる。
 チリのエネルギー源は、主として石油・天然ガス(約55%)、水力発電(26%)および石炭(18%)により賄われており、国内需要の40%は自給である。
 しかし、主要エネルギー源である石油、天然ガス、石炭の生産が伸び悩んでおり、エネルギー資源分野の積極的な国内開発が必要となっている。
 原油生産量は、1982年の248万4,000m3をピークに低下傾向を辿っており、94年の生産量は71万4,100m3に激減している。
 また、天然ガスの生産量も1979年の57億3,250m3をピークにして減少を続け、94年には42億4,400万m3になっている。
 このため、チリの燃料・エネルギーの輸入は、輸入総額の約9%(95年)にのぼっている。
 なお、チリの石油埋蔵量は5億バレルといわれている。
 なお、現在世界最大の18,700MWの巨大水力発電開発計画が進行中である。

 

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