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(1)一般事情
 コロンビア共和国は、南米大陸の北西部に位置し、北はカリブ海、西は太平洋に面し、パナマ、ベネズエラ、ブラジル、ペルー、エクアドルと国境を接している。
 国土面積は1,138,914?2(日本の3.10倍)で、国土の南北をアンデス山脈の北西端が走り、その東をマグダレナ川が流れカリブ海に注いでいる。
 北は北緯12度を限界とし、南は赤道直下にのぞみ、全国土が純然たる熱帯圏に属しているが、大半が山岳および高原地帯のため、四季快適な温暖気候のところが多い。
 海岸平野のカウカ平野は最良の農業地帯を形成し、首都サンタフェデボゴダ周辺は牧畜の盛んなサバンナ地帯、東部の傾斜地はリャノ平原と熱帯雨林となっている。
 住民の80%は、海抜1,000〜2,000mの気候温暖なアンデス山脈の高原地域に居住し、高原都市を形成している。
 首都サンタフェデボゴダは海抜2,600mにあるため、1月の平均気温は14.4℃、7月は13.9℃で、降雨量は年間平均1,052?である。
 人種は、75%が混血、20%が白人、4%が黒人、1%がインディオである。
 宗教は、国民の95%がローマカトリック教徒、その他少数がプロテスタント、ユダヤ教徒などである。
 言語は、公用語のスペイン語が広く一般に使用されている。
 コロンビアの内政は、現在、ゲリラ・麻薬対策と低成長ペースの経済の活性化が最優先課題となっている。
 米国が98年3月、コロンビアを外交的配慮から麻薬撲滅協力国に認定したことにより、経済制裁の懸念はなくなったが、ベネズエラとは国境周辺のゲリラルート問題などで緊張状態が続いている。
 また、外交基本方針としては、米国との協調および近隣アンデス諸国・リオグループとの友好関係の維持と、日本をはじめとしたアジア・太平洋諸国との交流強化などがあげられる。
 経済については、政府は経済国際化・近代化5カ年計画(90年2月〜)により、開放型経済への体制転換を行ったほか、労働、金融、税制、外貨、外国人投資等経済に関連するほぼ全ての分野において制度の改革を実施した。
 さらに、政府は94年11月、「社会的飛躍」と称する新経済社会開発4カ年計画を発表し、先の開放経済路線を基本的に踏襲しつつ社会開発投資に、より重点をおいた政策を推進している。
 順調に推移してきたコロンビア経済は、政情不安などにより96年には落ち込んだが、97年は金利の低下による生産部門の立直りやコーヒー輸出の増加、隣国ベネズエラの活況などが内需を刺激して、回復を果たしている。
 過剰な投機資金の流入により金融政策の方向付けが難しかったが、インフレや金利の低減に成功する一方、通貨は実質レートが更に強まっている。
 財政は、関税の引き上げも含め税収増に努めたが、赤字幅は拡大(中央政府財政でGDP(国内総生産)比4〜5%)、失業率は生産部門の回復にも係らず高まっている。
 経常収支は、輸出の増加とペソの切り下げ(名目ベースで約30%)で赤字拡大を防ぎ、潤沢な資本収支の黒字で補っている。
 98年は、政権の安定化、対米関係の改善で成長が期待できるものの、ゲリラ紛争が潜在成長力を殺ぐことが懸念されている。
 世銀の推定によれば、1995年の国民総生産(GNP)は、1993〜95年の平均価格で計算すると702億6,300万ドルで、一人当りでは1,910ドルに相当する。
 また、1985〜95年の期間の一人当りの実質GNPは、年平均2.8%の割合で増加し、この間の人口は年平均1.8%の割合で増加している。
 1985〜95年の期間の実質国内総生産(GDP)は、年平均4.2%の割合で増加している。
 農業部門(牧畜、林業、漁業を含む)は、96年GDPの11.1%を寄与し、労働人口の23.5%がこの部門に従事している。
 主要換金作物としては、コーヒー(96年輸出総額の14.9%)、ココア、砂糖きび、バナナ、タバコ、綿花、切り花などであり、米、カサバ、バナナ、ポテト、小麦、大麦なども主要食糧として重要である。
 小麦の生産量は約7万トンであり、国内消費の10%に満たない。
 小麦、大麦とも大量に米国から輸入されており、国内消費の伸びに伴い、今後も輸入量は増加傾向に推移するとみられている。
 牧畜業、林業も主要産業であり、食肉および木材の生産が重要である。
 1985〜95年の期間における農業部門のGDPは、年平均3.9%の割合で増加しており、95年の成長率は11.1%(世銀)を記録している。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力事業を含む)の96年GDPへの寄与率は33.1%を記録し、労働人口の約23%がこの部門に従事している。
 また、1985〜95年の期間における工業部門のGDPは、年平均3.9%の割合で増加し、95年の成長率は5.9%を記録している。
 工業に関しては、政府は既存企業の近代化、新規プロジニクトの実施、生産性の向上、地方分散化、中小企業振興など数多くの政策を実行し、他部門に比べ高い成長を目指している。
 特に鉱業は、コロンビア経済を担う重要分野であり、労働人口に占める鉱業の割合は僅か0.8%に過ぎないが、鉱業部門のGDPへの寄与率が、96年は5.4%に達している。
 既開発の主要鉱産物は、石油、天然ガス、石炭、ニッケル、エメラルド、金などである。
銀、プラチナ、鉄、鉛、亜鉛、銅、水銀、石灰石、燐鉱石などの埋蔵もあり、開発が進められている。
 コロンビアは、中南米では最大の石炭埋蔵量(89年推定181億トン)をもっといわれ、石炭産出は1985年以降、本格的な増産に向かい、これに伴い石炭輸出量も大きく伸びている。
 炭田開発プロジェクトの実施により、石炭生産量は85年の500万トン台から、95年には2,680万トンと約5倍に達している。
 石炭輸出も85年の1億3,100万ドルから、96年には8億5,000万ドルヘと飛躍的な増加で推移している。
 コロンビアの炭田は、露天掘りとしては世界最大規模の一つで、品質は米国のアパラチア炭田に次いで世界第2位の良質炭といわれている。
 コロンビアのフェロニッケル生産は、79年に産業開発公社(IFI)が米国企業と合弁でニッケル開発を行い、82年から本格的操業を開始したのがその始まりである。
 ニッケル埋蔵量は、平均2.7%のニッケル含有量のものが2,100万トン、平均1.5%のものが4,100万トンと発表されており、フェロニッケル生産の全量が輸出に向けられている。
 石油の輸出は、86年から開始されているが、その埋蔵量は9億バレルといわれている。
 石油の増産は、石油開発10カ年計画(1976〜85年)により油田開発を推進し、その結果84年10月にベネズエラとの国境付近で、埋蔵量10億バレル以上と推定されるクラボ・ノルテ油田が発見され、さらに91年以降カサナレ県クシアナ地区において大油田が相次いで発見されており、石油輸出増加による経済発展が見込まれている。
 96年の原油生産量は、94年の1億6,600万バレルに対し35%増の2億2,900万バレルと飛躍しており、これに伴い輸出額も同2.2倍の28億9,200万ドルに急増している。
 製造業は、96年GDPの17.1%を寄与し、労働人口の15.7%がこの部門に従事している。
 1985〜95年の期間におけるGDPは、年平均3.8%の比率で増加しており、95年の成長率は1.0%(世銀)となっている。
 製造業は、首都サンタフェデボゴタ、西北部のメデリン、西南部のカリなどの大都市周辺に集中しており、70年代には輸入代替工業の発展が中心であったが、80年代初期以降は輸出促進への傾向が強まり、食料品、化学品、繊維品、輸送機械などが輸出品として成長してきている。
 コロンビアは、石油、天然ガス、石炭、水力などエネルギー資源に恵まれている。
 エネルギー消費量はGDPの実質成長とほぼ同ペースで増大しているが、近年のエネルギー資源の加速状況からみて、今後はこれらの輸出はますます増大するものと思われる。

 

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