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(1)一般事情
 エクアドル共和国は、南米大陸の西岸に位置し、北はコロンビアと、東および南はペルーとそれぞれ国境を接し、西は太平洋に面している。
 本土から約1,000?沖の太平洋に散在するガラパゴス諸島もエクアドルの領土である。  国土面積は、283,561?2(日本の0.75倍)で、人口は1,173万人(96年)であり、首都をキト(95年推定人口140万人)におく。
 中央部には世界最高の活火山コトパクシのほか赤道直下に氷河をもつチンボラソなどの高山が多い。
 首都キトは、赤道直下にあるが、海抜2,900mの高地にあるので、気温は1月の平均15℃、7月の平均14.4℃と涼しい。
 エクアドルは、太平洋岸、アンデス高地、東部アマゾン低地に大別され、人口の多くはアンデス高地の盆地に集中している。
 住民は、白人・インディオ混血40%、インディオ40%、黒人・インディオ混血10%、白人10%から成る。
 言語は、スペイン語が公用語であるが、ケチュア語およびその他の土着語も日常広く使用されている。
 宗教は、住民の約90%がローマカトリック教徒である。
 高原の東部はアマゾン盆地の一部をなし、ゴム、パナマ草などを栽培し、アンデスの西斜面ではコーヒー、米、カカオ、砂糖きびなどの栽培が盛んである。
 エクアドルは、1822年に大コロンビアとしてスペインより独立、1830年に大コロンビアより独立、1979年に民政移管を行っている。
 外交の基本方針は、米国との協調、アンデスの統合、リオグループとの協調、環太平洋諸国・EU諸国との友好関係の維持・発展などである。
 なお、95年1月にペルーとの国境未確定地域において両国軍が衝突したが、リオ議定書保証国の仲介により停戦、イタマラティ平和宣言に署名し、96年10月にはサンティアゴ合意に達し、残存する諸問題を解決するための協議が進められている。
 エクアドルの97年の経済は、前年の成長率2.0%から3.4%へと1.4%の上昇をしているが、これは前年に急減した在庫の積み増しが大きく寄与している。
 急務である財政再建は、税制改正による税収の増加等により、財政赤字をGDP比2%まで圧縮している。
 懸案の通貨も安定し、金利は劇的に低下して生産活動への好影響が98年経済に期待されている。
また、高率のインフレは年初の公共料金の引き上げにより上昇したが、その後落ち着きを取り戻している。
 失業率は辛うじて一桁台を保っている。
 貿易黒字が半減したため、異例の前年の経常収支の黒字は赤字に戻っている。
 世銀の推定によれば、95年の国民総生産(GNP)は、1993〜95年の平均価格で計算すると159億9,700万ドル、一人当りでは1,390ドルであり、85〜95年の期間における一人当りの実質GNPは、年平均0.8%の割合で増加しており、この間の人口は年平均2.3%の割合で増加している。
 また、80〜90年の期間における実質国内総生産(GDP)は、年平均2.3%の割合で増加しており、同じく90〜95年の期間は3.4%の割合で増加しており、96年は2.0%の増加となっている。
 農業部門(牧畜、林業、漁業を含む)は、96年GDPの12.5%を寄与し、労働人口の28.0%がこの部門に従事している。
 農業は、山岳部では山間の盆地や斜面を利用した伝統的な農業が一般的であるが、沿岸部ではバナナ、カカオ、コーヒーなどの輸出向け換金作物のプランテーション経営が主流である。
 なお、切り花の輸出が95年の50万ドルから、96年には9,900万ドルに急増して貴重な外貨獲得源となっている。
 農業生産の比重が輸出向け作物に偏っているため、高い人口の伸びに対して国内供給に追いつかず、輸入農産物への依存も大きくなっている。
 主要穀物は、米、とうもろこし、小麦、大麦などであり、米、とうもろこしは自給可能であるが、小麦、大麦は多くの輸入により賄われている。
 牧畜業では、牛、羊、豚、馬、家禽類などの飼育が盛んに行われている。
 林業では、国土の約43%が森林であるが、大部分が東部のアマゾン・ジャングルの未開発地域で、商業的伐採は比較的少ない。
 エクアドルは、軽量のバルサ材(熱帯アメリカ産の樹木で、材質が極めて軽く強いので、浮標や航空機などに使用されている)の世界第一の輸出国であるが、最近では代替品のプラスチックが普及してきたため、バルサ材の輸出は減少傾向にある。
 海産食品分野では、特にエビ漁業が80年代に急激な伸びを示し、95年には世界第2のエビ漁獲国となっている。
 農業部門のGDPは、90〜95年の期間に年平均2.5%の成長を記録している。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力業を含む)は、労働人口の18.1%を雇用し、96年にはGDPへの寄与率は39.0%に達し、1990〜95年の期間のGDPは、年平均4.9%の割合で増加している。
 鉱業部門は、労働人口の僅か0.6%を雇用しているに過ぎないが、鉱業と石油精製業が96年GDPに占める割合は、11.1%と高い値を示している。
 鉱業資源としては、金、銀、銅、アンチモニ、亜鉛などがある。
 また、天然ガスも産出するが、その規模は小さい。
 金は特に有望視されており、従来の小規模かつ無秩序な採鉱に対し、政府は採鉱の合理化と零細採鉱業者の統合を促進し、増産に努めている。
 天然資源の効率的な開発および開発のための外国資本の導入を目的として、政府は鉱業法の改正を行ったが、インフラの未整備が新規の投資の妨げとなり、期待したほどの成果をあげていない。
 石油に関しては、エクアドルはOPEC(石油輸出国機構)に1973年に加盟している。
 石油の確認埋蔵量(87年現在)は15億バレル(推定埋蔵量は20〜25億バレル)であるが、年間1億バレルのペースで生産が継続されると、新油田の発見がない限り近い将来枯渇が危倶される。
 このため、政府は国家開発計画において、石油資源開発を最優先にとりあげ、油田および天然ガス田の探査活動を積極的に推進している。
 原油の生産はl1970年の僅か19万1,000トンから、96年には1,740万トンヘと急増している。
 エクアドルは、72年にオリエンテ州ジャングルの大油田と石油積出港エスメラルダスとを結ぶパイプラインを完成し、一躍石油輸出国となった。
 石油輸出は96年が15億2,100万ドル、97年が15億5,000万ドル(輸出総額の約30%)に達しており、石油はエクアドルにとって最大の輸出品目となっている。
 なお、95年の原油生産は2,000万トンに達している。
 製造業部門は、96年GDPの22.7%を寄与し、労働人口の11.2%がこの部門に従事している。
 1990〜95年の期間におけるGDPは、年平均3.2%の割合で増加している。
 製造業生産高の内訳(94年)をみると、食品加工(26.8%)、石油精製(19.3%)、化学品(17.3%)、輸送機械(5.2%)となっている。
 これらのうち、輸出製品は石油製品以外は殆ど全て食料品であり、その他の工業製品は輸出総額の3〜4%程度を占めているに過ぎない。
 エクアドルの製造業が停滞している要因は、インフラの未整備、技術者の不足、狭隘な国内市場などである。
 エクアドルのエネルギーは、主として水力発電と火力発電によって供給されており、鉱物性燃料や潤滑油の輸入は少なく、輸入総額の僅か3.0%(94年実績)を占めているに過ぎない。
 サービス部門のGDPへ占める割合は48.5%(96年)と高く、労働人口の約46%がこの部門に従事している。

 

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