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(1)一般事情
 アルゼンチン共和国は、南アメリカ大陸の南東部に位置し、北はボリビア、東はウルグアイ・ブラジル・パラグアイ、西はチリに接しており、南北は約2,600?の海岸線で大西洋に面し、東は大西洋から西はアンデス山系にいたる。
 国土面積は、2,766,889?2(日本の7.32倍)で、南アメリカではブラジルに次ぐ大国である。
 国土の約41%が牧場と遊牧地であり、約32%が森林地帯、約11%が農耕地となっている。
 ラプラタ河口に近いブエノスアイレス周辺に広がる大草原はパンパと呼ばれ、肥沃な土壌から成り、世界でも有数の農牧地帯である。
 パンパの北東部はチャコ地方と呼ばれる広大な低湿地とミシオネス台地がある。
 北西部はアンデス山麓に至るまで乾燥した砂漠になっている。
 南部のパタゴニア地方は高度400〜1,000mの台地をなしており、台地の間を多数の河川が大西洋に流れている。
 気候は、パンパ地域は温和で、夏季(12月〜2月)は平均23℃、冬季(6月〜8月)は平均8℃である。
 ブエノスアイレスの1月平均は23.3℃、7月平均は10℃で、年間降水量は89?である。
北東部は高温多湿、北西部は雨量が少なく乾燥した砂漠をなしている。
 パタゴニア地方は寒冷な南西風が吹き、雨量が極めて少なく乾燥している。
 人口は、3,467万人(96年)で、首都をブエノスアイレス(人口:91年5月296万人)におく。
 人種は、国民の97%が欧州系(スペイン、イタリア)、3%がインディオ系である。
 これは、アルゼンチンが独立当時、人口が稀薄で、国土開発のために外国移民を積極的に受入れる政策をとり、スペイン人、イタリア人が移住してきたことによる。
 言語は、スペイン語が主要言語であり、宗教は住民の多くが国教であるローマカトリック教を信仰している。
 アルゼンチンは、1976年から続いた軍政から、83年には民政移管が行われ民主主義が回復したが、同政権は経済改革に失敗し、社会的経済混乱を招いた。
 89年大統領選挙では、その混乱を背景にペロン党が勝利しメネム政権が成立した。
 同政権は、軍部との和解を進展させるとともに、自由開放経済政策を推進し、経済の安定化を達成し、メキシコ金融危機の影響を受けた景気低迷から脱出している。
 外交では、南米共同市場創設等近隣国との関係強化、先進国(欧・米・日など)との関係強化、国連等を通じた国際協力の推進を基本方針としている。
 日本はアルゼンチンと1898年に外交関係を樹立しており、日系人の存在もあり伝統的に友好協力関係を維持してきており、98年には日・ア修好100周年を迎えている。
 アルゼンチンの経済は、89年に現政権が成立以来自由開放経済政策が推進され、特に91年に発表した外貨取引の自由化と外貨準備高に応じた通貨供給量の制限および財政均衡等を骨子とした兌換法により、物価と為替の安定を達成した。
 また、同時に民営化、各種規制緩和、輸出促進を積極的に進め、構造改革を推進してきた。
 この結果、投資の増加がみられ、95年末のメキシコ通貨危機は95年の経済に、一時的に影響したが、93年、94年はそれぞれ6.0%、7.4%(95年は△4.6%)の経済成長を記録している。
 96年以降は回復、96年は4.3%、97年は8%(推定)の高度成長を達成している。
 世銀の推定によると、95年の実質国民総生産(GNP)は、1993〜95年の平均価格で算定すると2,784億3,100万ドルであり、国民一人当り8,030万ドルに相当する。
 1985〜95年の一人当りの実質GNPは、年率1.9%の割合で増加し、この期間に人口は年平均1.3%の割合で増加している。
 実質国内総生産(GDP)は、1990〜95年の期間に年率5.7%の割合で増加しており、実質GDPは95年は4.6%の減少、96年は4.3%の増加を記録している。
 農業部門(牧・林・漁業を含む)は、1995年のGDPの6%を寄与し、1996年には労働力の約10.8%がこの部門に従事している。
 アルゼンチンの主要換金作物は、小麦、とうもろこし、ソルガム、大豆などである。
 また、牛肉製品も極めて重要である。
 1990〜95年の期間に、農業部門のGDPは年平均0.5%の割合で増加した。
 工業部門(鉱・製造・建設・電力業を含む)は、95年GDPの31%を寄与し、労働力の25.3%がこの部門に従事している。
 1990〜95年の期間に、実質GDPは年平均5.9%の割合で増加しているが、95年は6.0%の減少を記録している。
 鉱業部門のGDPに占める比率は、1.8%(92年)で、労働力の0.4%がこの部門に従事している。
 1985〜92年の期間に鉱業部門の実質GDPは、年平均2.4%の割合で増加している。
 鉱業部門のうち、石油および天然ガスを除くと、GDPへの寄与率は1%以下となり、極めて低く、鉄、銅など殆どの鉱産物の対外依存度は非常に高い。
 このため、政府は自給率引上げの必要性を認識し、国内における石油・天然ガスをはじめとし、金、銅など地下資源の探査活動を続けており、有望な鉱床の発見が期待されている。
 1994年現在、国内における原油埋蔵量は15億7,000万バレルと確認されており、原油生産量(96年3,898万トン)は、年々増加傾向にある。
 また、天然ガスの埋蔵量は1993年現在約2億4,000万m3と推定されている。
 このほか、鉱物資源としては、金、銀、鉛、亜鉛、鉄、石炭、ウラニウムなどを生産している。
 製造業部門は、1994年のGDPの20%を寄与し、労働力の17.3%がこの部門に従事している。
 1985〜95年の期間に、実質GDPは年平均1.4%の割合で増加しており、95年は6.9%の減少、96年は5.7%の増加を記録している。
 アルゼンチンの製造業は、鉄鋼、自動車をはじめ、輸送機械、建設機械、家電製品、紙、パルプ、化学製品、食品など多岐にわたっており、中南米諸国ではブラジルに次いでメキシコと共に最も高い水準にある。
 これらのうち、最も重要な分野は、生産価値からみると、食料製品、化学製品、輸送機器、石油精製などである。
 政府は工業振興法、新外資法、外国技術移転法の制定など、相次いで積極策を導入して、製造工業の近代化・発展に努めている。
 アルゼンチンのエネルギー源は、主として水力発電(95年:42.7%)および石炭に依存している。
 1996年の発電量のうち11.4%は、原子力発電によるものである。
 鉱物性燃料の輸入は、国内需要エネルギーの3.3%に相当する。

 

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