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(1)一般事情
 トリニダット・トバゴ共和国は、カリブ諸島最南端のトリニダット島と、その北東32?の海域にあるトバゴ島およびその周辺の小島で構成する共和国であり、 南アメリカ大陸の北端、ベネズエラのすぐ北東に位置する。
 1958年、イギリス領西インド連邦の一部になったが、62年独立して、イギリス連邦内の共和国となった。
 国土面積は、5,130万?2(日本の0.02倍)で、このうちの94%をトリニダット島が占めている。
 トリニダット島は、ベネズエラ山地の延長とみられ、北部は山がちで、最高峰は941mのアリポ山がある。
 気候は、海洋性の熱帯気候であるが、赤道に近いため気温の年格差が少なく、年平均気温は27℃前後であり、比較的しのぎ易い。
 トリニダット島の大半は熱帯林で覆われており、東西にかけて3つの山脈が縦走し、島の東と西の沿岸は一部湿地帯となっている。
 年間降雨量は、東部海岸近くの山地では年平均3,000?を超えるが、北西岸および南西岸部では1,400?以下となる。
 雨季と乾期が明瞭な熱帯気候で、1〜5月中旬が乾期で3月が最も雨が少なく、6〜12月が雨季で8月が最も雨が多い。
 また、西インド諸島中、最も豊かな島で、石油の輸出が総輸出額の約50%を占めるほか、アスフアルト原料のピッチ、砂糖、ココア、コプラなどを産する。
 一方、トバゴ島は僅か300?2に過ぎない小さな火山島であり、島の中央に沿って火山活動でできた山脈が走り、観光地として美しい浜辺に恵まれている。
 両島の人口は、132万人(96年)で、首都をポート・オブ・スペイン(94年央人口:5万人)におく。
 住民は、アフリカ系黒人(41%)、インド人(41%)、混血(16%)、白人(1%)、その他中国人等(2%)である。
 言語は、英語が公用語であるが、スペイン語、フランス語、インド語、中国語なども使用されている。
 宗教は、カトリック、英国国教、ヒンズー教、イスラム教などである。
 トリニダット・トバゴは、人民国家運動党(PNM)が長期安定政権を維持していたが、石油価格低落による不況で国民の不満が高まり、1986年の総選挙により国家再建連合党(NAR)が政権についた。
 しかし、1987年末頃からNRAの内部対立が表面化し、1990年には回教徒集団による政府転覆未遂事件が発生した。
 1991年の総選挙で、PNMが政権に復活したが、1995年の総選挙においてPNMは過半数をとれず、統一国民会議(UNC)とNARの連立政権となり、現在に至っている。
 現連立政権は、両党の閣内対立が厳しく政情不安を招いている。
 対外的には、キューバ、北朝鮮などと外交関係をもち、かつ、非同盟路線を採っているが、欧米、カリブ諸国との関係は緊密である。
 国内のインド系と黒人系との対立も政情の一因となっている。
 トリニダット・トバゴの経済は、横這い状態が続いているが、1997年は、部門別では砂糖生産が増加した農業が好調で、建設・運輸業も好調であった。
 製造業は伸び悩んだが、石油化学部門は前年同様活発であり、主力であるメタノール輸出は急増(21%増)した。
 輸入の激増(約37%)は、経常収支を赤字に転化したが、直接投資が増加して90年以降赤字続きの資本収支を黒字化し、また、財政はメタノール公社の資産売却収入で赤字を圧縮している。
 インフレは沈静化しているが、失業率は17%台と高い。
 世銀の推定によると、トリニダット・トバゴの1996年の国民総生産(GNP)は、1994〜96年の平均価格で計算すると50億1,700万ドルで、一人当りでは3,870ドルである。
 1990〜96年の期間の一人当りの実質GNPは年率0.1%の割合で増加しており、同期間の人口は、年率0.8%の割合で増加している。
 また、実質国内総生産(GDP)は、1980〜90年の期間に年率2.5%の割合で減少し、1990〜96年の期間では年率1.2%の割合で増加している。
 農業部門(林・牧・漁業を含む)は、97年GD Pの1.7%を寄与し、労働人口の10.6%がこの部門に従事している。
 主要換金作物は、砂糖きび、コーヒー、ココア、柑橘類であり、重要な外貨獲得源となっている。
 これらのほか、カカオ、ヤシ、バナナ、マホガニーなどの熱帯材の生産も行われている。
 漁業は未だ小規模であるが、各地域における食料として重要である。
 世銀の推定によれば、1985〜95年の期間の農業部門のGDPは、年率3.5%の割合で減少している。
 米国相互開発銀行の推定によれば、農業部門のGDPは、96年が3.8%の増加、97年が0.9%の減少となっている。
 工業部門(鉱・採石業、製造業、建設業、電力を含む)は、97年GDPの42.5%を寄与し、労働人口の25.6%がこの部門に従事している。
 世銀の推定によれば、1985〜95年の工業部門のGDPは、年率0.9%の割合で減少している。
 また、IMFの推定によれば、95年の4.6%の成長率を記録している。
 米国相互開発銀行の推定によれば、鉱業・採石業のGDP成長率は96年は1.7%、97年は4.0%それぞれ減少となっている。
 石油産業は、トリニダット・トバゴ経済にとって最も重要な分野である。
 しかし、1990年に国家歳入の47%を占めていた石油産業は、96年までに16.6%へと大きく後退した。
 これは、減産と国際価格の低落に起因するものであるが、依然として全輸出額の半分以上、GDPの25%を確保している。
 石油精製業については、現在2つの精油所があり、国営石油会社(Trintoc Ltd.)によって運営されている。
 同社は主として輸出向け燃料油を生産しているが、世界的需要減退により、稼働率は約20%と低く、この精製部門における低生産はかなり深刻な問題となっている。
 現在は、国内における石油精製能力は、年間305,000バレルであるが、国産原油の供給量が十分でないため、国内精油所に必要な原油の一部をベネズエラ、エクアドル、ブラジル、インドネシア、サウジアラビア、ナイジェリアから輸入している。
 トリニダット・トバゴのエネルギー源は、主として天然ガスと石油である。
 国内電力供給量の大部分は、国内で産出する天然ガスによるものである。
 また、天然ガスは国内精油および多数の製造工場の燃料として使用されている。
 なお、石油製品の輸入額は、1993年には輸入総額の15.9%を占めていたが、95年には僅か0.5%に減少している。
 近年、国営製鉄会社(Iscott/Ispat)による需要の増大により、燃料としての天然ガスの利用は実質的に増加している。
 トリニダット・トバゴの天然ガス埋蔵は3,900億m3といわれている。
 石油産業の収入減を補うため、天然ガスの開発が推進されており、89年には外国の2社と国営ガス会社(Trintoc Ltd.)との間で、液化天然ガス工場建設のための合弁企業が設立され、東南海岸におけるガス油田開発工事が開始され、また、海底油田とポイント・リサスエ業地帯を結ぶ長さ120?のパイプラインの建設は既に完成し、稼働している。
 石油および天然ガス以外では、トリニダット・トバゴは世界最大の天然アスファルト供給国であるが、世界市場の需要減退に伴い生産量は86年以降低迷している。
 製造業は、1997年のGDPの18.8%を寄与し、労働力の10.2%がこの部門に従事している。
 その最も重要な分野は石油精製、食品加工、セメント、石灰、石膏、肥料、鉄鋼などである。
 経済の多角化と外貨獲得の観点から、観光事業は政府が最も力を入れている部門の一つである。
 この努力が実り、海外からの観光船の寄港も増え、97年の観光客数は25万人に達している。
 トリニダットとトバゴの両島は、温和な気候と明媚な海岸線に恵まれ、米国、カナダ、欧州、カリブ海沿岸地域などからの観光客が多い。
 政府は、国際空港および港湾施設の改善、近代的豪華ホテルの建設などにより、観光事業の一層の発展に努めている。

 

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