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(1)一般事情
 グアテマラ共和国は、北と西はメキシコと、東はベリゼおよびホンジュラスと、南はエル・サルバドルと、それぞれ国境を接し、西南部は太平洋に臨み、東部の一部はカリブ海に面している。
 国土面積は、108,889?2(日本の約0.29倍)で、人口は1,062万人(95年)であり、首都をグアテマラ・シティーにおく。
 人種は、原住民のインディオ42%、欧州系白人8%、混血(ラディーノ)50%となっている。
 言語は、スペイン語が公用語であるが、20種類以上の土着語が日常語として、原住民の間で使用されている。
 宗教は、人口の95%以上がカトリック教徒となっている。
 グアテマラの南部と北部には平地が存在するが、中央部は火山、深い渓谷、湖沼などのある山地である。
 海抜600〜1,500mの高地ではコーヒーを栽培し、首都グアテマラ・シティーも高地にあり、コーヒー産地の中心である。
 グアテマラの太平洋側の斜面は、比較的狭いが、標高30〜150mの高原は、降水量が豊富で変化のある気候と肥沃な土壌に恵まれ、各種の農産物の栽培を行っており、人口も稠密な地域となっている。
 一方、カリブ海の斜面は、ペタン州のゴム(チューインガムの原料)栽培、木材生産、コバン地方のコーヒー農園、モンタギュー盆地やイサベル湖地方のバナナ栽培などを除いては、商業的重要性に乏しく、人口も希薄である。
 グアテマラをはじめ中米全土は、1523年から1821年にわたって、スペインの統治下にあったが、1821年に独立宣言し、1823年に中米諸州連合を結成した。
 1838年にグアテマラ共和国が成立し、長期独裁政権による支配が続いた。
 1944〜54年の間、自由主義的改革が行われ、54年には保守政権による統治が開始され、65年に憲法が制定された。
 1970年以降は、軍人大統領が継続していたが、86年に20年ぶりに民政移管を達成している。
 1993年には、永年続いたゲリラとの間の和平交渉、貧困対策、人権改善等の政策が積極的に推進された。
 一時中断されていた和平交渉も、94年に国連の仲介により再開され、大幅に前進し、96年には政府・ゲリラ間で最終和平合意が成立し、36年間に亘って続いてきた中米最後の内戦が終了している。
 グアテマラは、経済発展と国内および中米の平和と安全を維持することを外交の基本とし、広く開かれた外交、国益に従い全ての国との友好関係を築くことを表明している。
 日本とは、伝統的に友好関係にあり、1935年に外交関係が樹立している。
 また、グアテマラにとって日本は、最大の経済援助国でもある。
 グアテマラの経済は、1970年代には6%台の経済成長率を維持していたが、79年のニカラグア革命を契機とする中米諸国の政情不安により、中米諸国の貿易停滞、外国からの投資減少などが深刻化し、その結果、成長率は急落し、82年以降はマイナス成長に転じた。
 86年の民主政権発足後は、国内政情の安定を背景とする経済活動の活発化に伴い、成長率は好転、プラス成長となっている。
 また、政府は主に経済活性化、民主制強化、社会基盤整備を目的とする国家再編計画を発表し、インフレ抑制、経済活性化、基礎的社会公共サービス向上などのための各種政策を展開した。
 この結果、実質GDPの増大、インフレ抑制、為替相場統一など所期の目的を達成している。
 世銀の推定によれば、グアテマラの国民総生産(GNP)は、94年122億3,700万ドル、95年142億5,500万ドルで、一人当りではそれぞれ1,190ドル、1,340ドルとなっている。
 85〜94年の期間では、一人当りのGNPは年率0.9%の割合で増加しており、この間の人口は年率2.9%の割合で増加している。
 また、国内総生産(GDP)では、85〜95年の期間では、年率3.6%の割合で増加しており、94年4.0%、95年4.9%、96年3.1%の成長を遂げている。
 1996年のGDPの産業部門別構成は、農業部門が24.0%、製造部門が14.0%、商業部門が24.6%、輸送・倉庫部門が7.8%、サービス部門が13.1%となっている。
 農業部門(林・漁業を含む)は、1994年のGDPの24.5%を寄与している。
 95年には、労働人口の58.1%がこの部門に従事している。
 主な換金作物は、コーヒー、砂糖きび、バナナ、カルダモン(香辛料の一種)などである。
 グアテマラは、中米では第2位のコーヒー産出国であり、国内には約12,000のコーヒー農園があり、面積約34万ヘクタールのプランテーションでコーヒーの 木が栽培されている。
 コーヒーは、同国最大の輸出商品となっており、94年には全輸出収入の22.3%を、97年には25.8%を占めている。
 また、農業生産の多様化の結果、葉タバコ、ゴム、野菜、果物などもグアテマラの重要な輸出品目として、その一部は日本へも輸出されている。
 エビも貴重な輸出産品の一つである。
 牧畜業では、グアテマラの重要な家畜は牛で、家畜保有頭数のうちでも大きな割合を占めている。
 森林の面積は、1,780万エーカーに及んでおり、特にペタン州は森林資源が豊富で、マホガニーその他各種の木材を産出している。
 世銀の推定によれば、85〜95年の期間のGDPは、年率2.6%の割合で増加しており、95年の成長率は3.3%を記録している。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力事業を含む)は、94年GDPの19.6%を寄与し、労働人口の18.1%がこの部門に従事している。
 世銀の推定によれば、85〜95年の期間のGDPは、年率3.0%の割合で増加しており、95年の成長率は4.3%を記録している。
 このうち、鉱業部門のGDP(94年)は0.3%を寄与し、労働人口の0.1%がこの部門に従事している。
 石油は、鉱業部門の輸出のうちで最も重要なものであるが、輸出総額に占める割合は、僅か1.4%(94年)に過ぎない。
 石油以外に、銅、アンチモニ、鉛、錫、タングステン、ニッケル、金、銀などの埋蔵もあるが、いづれも小規模であり、未開発のものが多い。
 グアテマラの製造業は、中米では最大規模である。
 製造業部門のGDPへの寄与率は、14.4%(94年)であり、労働人口の約13.6%がこの部門に従事している。
 主要業種は食品加工、織物、製薬、化学品などである。
 世銀の推定によれば、85〜95年の期間の製造業部門GDPは、年率2.1%の割合で増加しており、95年の成長率は3.3%を記録している。
 サービス部門は、GDPの55.9%(94年)を寄与し、労働人口の23.8%(95年)が同部門に従事している。
 世銀の推定によると、サービス部門のGDPは、85〜95年の期間に、年率3.5%の割合で増加しており、95年の成長率は6.0%を記録している。

 

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