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(1)一般事情
南アフリカ共和国(以下南アとよぶ)は、アフリカ大陸の最南端に位置し、国土面積は122万?2(日本の約3.2倍)、人口は3,785万(96年)で、首都をプレトリア(人口:市部44万人、首都圏82万人)におく。
 人種は、黒人、白人、カラード(混血)、アジア系から成り、言語は英語、アフリカーンス語、バンツー諸語(ズールー語、ソト語ほか)の合計11が公用語となっている。
 宗教は、キリスト教(人口の約80%)のほか、ヒンズー教、イスラム教などである。
 南アは、気候は温暖で農業、牧畜、野菜栽培などに適し、また、金、ダイヤモンド、プラチナ、ウランなどの鉱物資源が豊富に存在している。
 さらに、製造工業も近年著しい発展を遂げ工業化が推進されて、アフリカ大陸唯一の工業国となっている。
 内政では89年以来、アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃に向けての改革が進展し、その集大成として94年に、南ア史上はじめて黒人を含む全人種参加の下で総選挙が実施され、マンデラ大統領が選出されている。
 マンデラ政権は当初ANC、国民党、インカタ自由党の3党からなる連立政権として発足したが、その後、国民党は政権を離脱している。
 マンデラ政権(任期99年4月)は、国民融和の実現、新憲法の制定、復興開発計画(RDP)・マクロ経済政策(GEAR)の推進等を課題として、政策を展開している。
 一方、外交面ではアフリカ統一機構(OAU)および非同盟諸国会議への加盟、英連邦への再加盟を果たし、また、国連総会の議席を20年ぶりに回復、さらに南部アフリカ開発共同体(SADC)へも加盟を果たしている。
 基本的外交方針としては、(1)南部アフリカおよび他のアフリカ諸国との政治的連帯およびSADC等を通じた経済的協力関係の強化、(2)国連等の国際機関への参加を通じた平和・民主主義・人権擁護への貢献の重視、(3)政治のみならず経済・開発等の重要分野における欧米諸国や日本とのこれまでの協力関係の維持・発展、(4)アジア諸国や中東諸国等との新たな経済関係の強化を目指している。
 南ア経済は、93年から好転し、国内総生産(GDP)成長率が95年3.4%、96年3.1%を記録するなど、順調に推移してきたが、97年は1.7%に低下した。
 これは、96年からのランド安を背景に競争力を増した製造部門が、順調な伸びをみせたにも係わらず、農業部門の不振が響いたためである。
 96年は、ランドの為替レートが約20%下落したため、南ア準備銀行の金外貨準備高は減少し、短期資本が国外に流失したが、ランドの下落により輸出が増加、経常収支の赤字は改善しつつあり、97初より為替相場は安定的に推移している。
 一方、失業率は、96年10月現在で32.6%に上り、堅調な経済成長にもかかわらず、未だ十分な雇用の創出につながっていない。
 政府は96年6月に、「経済成長、雇用創出、所得再配分」を骨子とする長期マクロ経済成長戦略(GEAR)を発表している。
 これにより、財政赤字の削減、為替管理の緩和、関税引き下げ、投資促進措置の導入、公営企業の民営化、労働市場の柔軟化等の諸施策を総合的に実施し、実質GDP成長率6%、年間41万人の雇用創出、工業製品輸出年率10%以上の増加等を目標とし、2000年に年率6.1%の経済成長の達成が期待されている。
 南アの経済構造は、オランダ系、ドイツ系白人の移民による農業植民地として出発したが、1967年にダイヤモンド、87年に金が発見されてその経済構造は、鉱業依存度を急速に強めることとなった。
 さらに、現在では貴金属鉱物に加えてクロム、マンガン、バナジウム、ウラン、プラチナなど戦略的な稀少金属の生産でも世界トップクラスである。
 金は埋蔵量、生産量とも世界第1位であり、ダイヤモンドも埋蔵量、生産量がそれぞれ世界第2、第3位である。
 稀少金属類の殆どは、埋蔵量、生産量とも世界第1位を占めている。
 1970、80年代に反アパルトヘイト運動の高まりによる国際的経済制裁があり、政府は自給自足を図るため、製造業の振興を推進した。
 このため、実質GDPに占める鉱業部門の寄与率は年々減少してきている。
 実質GDPに占めるシェアは、鉱業が80年の25%から95年は9%まで減少し、逆に製造業は95年には25%に拡大している。
 世銀の推定によれば、95年の南アの国民総生産(GNP)は、1,309億1,800万ドル、1人当り3,160ドルとなっている。
 1985〜95年の期間では、1人当りのGNPは年率1.0%の割合で減少しており、この間に人口は年率2.3%の割合で増加している。  GDPは、1980〜90年の期間では年率1.3%の割合で増加し、90〜95年の期間では0.6%の割合で増加している。
 94年は2.3%、95年は3.3%、96年は3.1%の成長率となっている。
 ただし、97年は農業部門の不振に影響され1.7%に減速している。
 農業部門(林・漁業を含む)は、1995年GDPの4.2%を寄与し、労働人口の11.4%が、この部門に従事している。
 とうもろこし(主食でもある)、果物、砂糖などが輸出されているが、牧畜業も重要な産業で、羊毛、毛皮、食肉は重要な外貨獲得源となっている。
 1985〜95年の期間のGDPは、年率0.6%の割合で減少している。
 商業的重要性をもつ森林は、162万ヘクタールに及んでおり、約10万人がこの部門に従事し、国内需要の約90%を満たしている。
 鉱・工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力を含む)は、95年GDPの37.8%を寄与し、労働者の30.4%がこの部門に従事している。
 1980〜93年の期間に、鉱・工業部門のGDPは年率0.2%の割合で減少している。
 このうち、鉱業部門は95年GDPの7.5%を寄与し、労働者の8.8%がこの部門に従事している。
 南ア経済近代化の原動力は鉱業である。
 鉱物埋蔵量は、金が世界埋蔵量の50%、クローム鉱が84%、マンガンが78%、プラチナが74%、バナジウムが47%といわれており、貴重な外貨獲得源となっている。
 南アは世界最大の金産出国であり、94年の生産量は約579トンで、売上高は約250億ランド、プラチナは生産高が約165トン、売上高57億ランド、鉄鉱石は生産高3,232万トン、売上高約14億ランドとなっており、鉱産物全体では輸出総額の約33%を占めている。
 製造業部門は、95年GDPの23.4%を寄与し、労働者の14.9%がこの部門に従事している。
 主な業種は、石油、石炭、食料、輸送機器、化学品、鉄鋼、金属、機械、紙、織物などの製造である。
 製造業部門のGDPは、1985〜94年の期間に年率0.2%の割合で増加している。
 南ケープの南西140?にある油田の開発も97年に開始されることになっている。

 

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