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 この計画は、1962年の第1次3カ年計画(1962〜64年)から始まり、続いて4カ年計画(第2次1965〜68年、第3次1969〜72年、第4次1973〜76年)を経て、現在では5カ年計画(第5次1977〜81年、第6次1982〜86年、第7次1987〜91年)が樹てられており、民営化の推進、企業のリストラの支援、インフラ整備、社会的進歩を4つの基本方針としている。
 80年代に入るまで、チュニジアは国内経済成長を石油産業に大きく依存していたが、第6次計画(1982〜86年)から石油埋蔵量の枯渇による生産減少を予期し、石油収入源に対応するための構造転換策の導入を始めた。
 雇用増加、石油以外の輸出促進、貿易赤字削減のための管理等を目標として実施したが、結果的にはGDP成長率は目標の6%の50%しか達成できず、雇用数も目標の74%しか達成できなかった。
 特に、1986年は石油価格の暴落と干ばつによる穀物の収穫減、観光客の減少が重なり、政府は石油輸出依存からの脱却、経済の立て直しに再び挑戦することとなった。
 第7次計画(1987〜91年)においては、GDP成長率、雇用数の目標を前回よりも緩和した。
 さらに、ディナールの切り下げが行われ、輸出および外国からの観光客の促進を行った。
 また、農業への投資の比率を上げるとともに、公共投資を減らし民間投資(目標56%)を奨励した。
 第8次計画(1992〜96年)においては、観光収入の増加(目標伸び率22.3%)を基本としたGDPの年間成長率6%を目標に、農業、漁業生産の年間増加率を1.8%、民間投資を50%以上見込んだ投資額174億ディナールとした計画で推進した。
 なお、引き続いて第9次計画(1997〜2001年)が現在実施されている。
 チュニジアは基本的に農業国であり、チュニジア経済に占める農業部門の比重は、相対的に低下しつつあるが、GDPの17%(96年)、就業人口の約30%を占めている。
 農業生産は、オリーブ、果物、綿花をはじめ輸出用作物が主体であり、国内向け穀物は少ない。
 これは、特定作物の供給源を植民地ごとに設定し生産させていた旧宗主国フランスの植民地政策が、現在でも農業生産形態に影響を及ぼしているためである。
 また、灌漑設備も特定地域に偏在しており、生産が天候に左右され易い体質は改善されていない。
 牧畜は、チュニジアにとっては砂漠地帯住民の重要産業であり、政府の牧畜奨励政策により、牛、羊、山羊、馬、酪駝などの飼育数が増加している。
 石油・天然ガス・鉱物資源は・チュニジアにとって重要な獲得減であり、96年の輸出額の約22%を占め、同GDPの8.5%を寄与している。
 石油は、地下埋蔵量の枯渇や国内消費量の増加により、輸出は年々減少しており、97年の石油生産量(推定)は390万トンとなっている。(87年生産量は48万トン)
 天然ガスの埋蔵量は、今後15年間の国内需要に応じることが可能とされているが、一部は輸出に向けられている。
 現在・主要産地はカプボン、エルボルマ、ガベス湾沖であり、年産4億?台を維持している。
 天然ガスを利用して、燐酸、アンモニア、硝酸などの化学品の生産が活発化している。 鉱物資源としては、燐鉱石、鉄鉱石、鉛鉱、亜鉛鉱などを産出しているが、いずれも規模は小さい。
 燐鉱石の97年の生産量(推定)は、720万トンであり、鉄鉱石・肥料の96年輸出額は、輸出額全体の約7.5%を占めている。
 製造業は、国内産の農産物と鉱産品の加工を基礎としている。
 食品加工の主な製品は、オリーブ油、ワイン、砂糖、製粉、ビール、タバコなどで、オリーブ油・ワイン・砂糖は重要な輸出商品となっている。
 繊維製品は、近年急速な成長を遂げ、製造部門では食品加工に勝る重要商品となり、製品の一部は主にEC諸国に輸出されている。
 96年の織物と皮革製品の合計輸出額(推定)は、全輸出額の51%を占めるに至っている。
 化学工業は、国内産の燐鉱石を利用した過燐酸塩、燐酸肥料が主要製品である。
 このほか、殺虫剤、薬品、塗料、ワニス、洗剤などが生産されている。
 石油精製は、ビゼルタ精油所(年間精油能力200万トン)があるが、精油量は限界に達している。
 このため、政府は第7次経済開発計画(1987〜91年)の中で、年産500万トンを目標として、第2精油所を建設した。
 セメントの生産は、年間300万トンにまで達しているが、経済開発に伴う国内需要が急速に伸びているため、輸入に依存する割合が増加傾向にあり、新工場を増設している。
 鉄鋼は、ビゼルタの近郊に国営製鉄所があり、タムラとジェリッサの鉱山から鉄鉱石の供給を受け、鉄鋼、ワイヤー、鋳鋼、棒鋼などの生産をしている。
 機械工業は、外国資本との合弁企業によるものが多く、自動車、テレビ、ラジオ、ミシン、家庭用設備などの組立て、ボイラー、工具、缶、電気部品などの製造を行っている。 自動車はフランスの大手メーカーが組立工場を設けて、乗用車、トラック、バス、トラクターなどを生産している。
 工業化の発展に伴い、電力消費量が急激しており、水資源に乏しい同国では、電力供給の大部を火力発電に依存している。
 このため、ガベスに原子力発電所の建設が予定されている。
 政府は、工業化促進のための奨励業種として、国内の原材料を使用する比率の高い業種・先端技術業種・輸出志向業種を指定しており、特に輸出志向産業に対しては、外国資本との合弁企業も含め各種の特典を与えている。

 

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