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(1)一般事情
 タンザニア連合共和国は、アフリカ大陸の東部に位置し、北部はウガンダおよびケニア、西部はザイール、南部はザンビア、マラウイおよびモザンビークと、それぞれ国境を接している。
 国土面積は、883,749k?(日本の2.34倍)、人口は3,034万人(95年央推定)で、首都をダルエスサラーム(市部人口、l10万人)におく。
 言語はスワヒリ語(国語)と英語(公用語)であるが、いくつかの部族語も日常生活に使用されている。
 宗教はイスラム教(31%)、キリスト教(25%)、伝統宗教(44%)である。
 気候は、東部の海岸地方は高温多雨であるが、西部の高原地方は乾燥気候である。
 首都ダルエスサラームの平均気温は、1月が28℃、7月が23℃、年間降水量は1,064?である。
 タンザニアは、1961年の独立以降、政府の強力な指導により内政は安定している。
 1967年のアルーシャ宣言に基づくアフリカ型社会主義建設を国家目標とし、各種資産の国有化、農村部の生産共同体化等を行ったが成功せず、最近では経済の自由化を推進し、一定の成果を上げている。
 1992年になって、内政、特に経済再建に政治の重点が置かれるようになってきたのに伴い、近隣諸国との友好関係の確立、地域協力の推進(特にケニア、ウガンダとの東アフリカ三カ国協力)、さらに日本を含む先進諸国との関係強化に努めている。
 外交の基本方針は、非同盟政策を基調としつつ、アフリカの統一と未解放地域の独立を強く唱え、アフリカ統一機構(OAU)、国連等の国際場裡においてリーダーシップを発揮した。
 近隣諸国との関係は良好であり、ケニア、ウガンダと東アフリカ協力(EAC)を推進している。
 また、南部アフリカ開発共同体(SADC)のメンバーとなっている。
 タンザニアの経済は、1970年代半ばから経済状態が悪化した。1986年に対1MF交渉に合意し、IMF、世銀の支援の下に経済再建に着手した。
 その後、経済は回復基調となっている。
 今後、政府は歳入欠損問題の改善、歳出抑制により健全財政確立を目指すとともに、新規に作成された「財政計画策定手法(RPFB)・96〜98年度」に沿って、経済改革を更に進展させていく方針である。
 タンザニアの1995年の国民総生産(GNP)は、世銀の推定によると37億300万ドルで、一人当りでは120ドルである。
 1985〜93年の期間には、一人当りのGNPは年率1.4%の割合で増加している。
なお、1985年〜95年の期間に人口は、年率3.1%の割合で増加している。
 タンザニアの国内総生産(GDP)は、1980〜94年の期間に、年率2.9%の割合で増加しており、94年は3.0%の増加となっている。
 タンザニアの経済は農業によって支えられており、農業部門(林業、漁業を含む)は、1996年のGDPの52.2%を寄与しており、95年の全労働者の83.2%がこの部門に従事している。
 主な換金作物は、コーヒー(95年の輸出収入の21.6%)、綿花(同18.2%)、カシュの実(同9.7%)、チョウジ(ザンジバルの最重要な輸出品)などである。
 このほか、換金作物としてはタバコ、紅茶、サイザル麻、ココナツ、砂糖、ショウズなどがあるが、政府は食糧自給を図るため、カサバやトウモロコシを中心とした食糧増産に力を入れている。
 世銀によれば、農業部門のGDPは1986〜95年の期間に、年率5.7%の割合で増加しており、95年は7.0%の増加となっている。
 タンザニアは、EEC(欧州経済共同体)の資金援助により、長期コーヒー増産計画を実施してきたが、コーヒーの輸出の拡大範囲は、ICA(国際コーヒー協定)に基づく一定の割当てにより制限されており、この割当てを超えた余分は、ICAの価格水準より遙かに低い価格で世界市場へ売却することが義務づけられている。
 また、チョウジ(熱帯産の常緑樹で、乾燥した蕾は香辛料または薬用として使用される)は、主としてペンバ島で栽培されており、ザンジバル島の外貨収入の約80%を占めていたが、世界価格の急落により生産は縮小し、最近では40%程度に下落したものと推定される。
 牧畜業は、95年の家畜飼育頭数が牛1,337.6万頭、羊395.5万頭、山羊968.2万頭、豚33.5万頭、ろば17.8万頭に達しており、年々増加傾向にある。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力を含む)は、1996年のGDPの14.0%を寄与しており、80年の全労働人口の4.5%が、この部門に従事している。
 1985〜94年の期間における工業部門のGDPは、年率6.8%の割合で増加しているが、世銀の推定によると、95年は6.8%の減少を記録している。
 鉱業部門は、1996年のGDPの僅か1.3%の寄与に過ぎない。
 また、全労働人口の0.1%しか、この部門に従事していない。
 鉱産物としては、ダイヤモンドおよび宝石(ルビー、サファイア)、金、岩石、燐鉱石、石炭、石膏、陶土、錫があり、天然ガスの開発計画も推進されている。
 これらの他にも、ニッケル、銀、コバルト、銅、鉄鉱、ウラン鉱などの埋蔵も確認されており、さらに石油の探査も計画されている。
 金鉱石は、85年に西部のカハマ地方に約430万トンの埋蔵が発見され、タンザニア国営鉱山会社とフィンランドの会社との間で、金鉱石開発のため合弁会社が設立されている。
 北部地方のミンジング鉱山の燐酸鉱は、タンガ肥料工場へ供給されている。
 錫鉱山も小規模ではあるが開発されている。
 北西部地方では、ニッケル鉱の埋蔵探査が行われている。鉄鉱石は、南西部地方のチュンヤおよびリンガンガに推定1億3,000万トンの埋蔵があり、その近辺のケテワカ・ムチュチュマには推定2億トンの石炭埋蔵が発見されており、中国の援助によって開発されている。
 ウラニウムの埋蔵も最近発見され、政府はその開発計画を進めている。
 石油および天然ガスは、既にソンゴ・ソンゴ島付近の沖合に410億?、ダル・エス・サラームの南東のキンビジに1,300億?の天然ガス埋蔵が発見されている。
 なお、ダル・エス・サラームには年産75万トン能力の石油精製所がある。
 IMFによれば、鉱業部門のGDPは1986〜95年の期間に、年率18.2%の割合で増加し、95年の成長率は6.0%となっている。
 現在、タンザニアの工業の多くは、小規模の非能率な企業により行われているため、収益率は極めて低い。
 製造業は、1996年のGDPの6.1%を寄与しており、この部門には全労働人口の1.7%が従事している。
 その最も重要なものは、食品加工、織物、タバコ製造、醸造などである。
 このほかに、パルプ・製紙、肥料、セメント、織物、タイヤ、バター、製薬などおよび油精製、金属加工、自動車などがある。
 IMFによれば、製造業のGDPは1986〜95年の期間において、年率0.9%の割合で増加しているが、95年は1.0%の減少を示している。
 エネルギーは、主として水力発電所から供給され、国内電力需要の70%以上を充足している。
 なお、石油・石油製品の輸入は、輸入総額の11.0%(95年)を占めている。

 

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