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(1)一般事情
 ガーナ共和国は、ギニア湾に面した西アフリカ諸国のほぼ中央部に位置し、東部はトーゴ、西部はコートジボアール、北部はブルキナフォンと、それぞれ国境を接し、南部はギニアに面した約350マイルに及ぶ海岸線をもち、国土面積は238,533k?(日本の0.63倍)である。
 人口は、1,783万人(96年央推定)で、首都をアクラ(人口:市部56万人、首都圏74万人)におく。
 人口の約42%がキリスト教徒、約13%が回教徒、このほか若干のアニミスト(原始宗教信奉者)がいる。
 言語は、公用語である英語のほか、地方ではアカン語など各種族がそれぞれ異なった種族語を日常使用している。
 気候は、熱帯性気候であるが、サハラ砂漠からの暑くて乾燥したほこりっぽい北東貿易風と、南の海上からの比較的涼しく湿気をおびたモンスーン、もしくは西南貿易風とによって影響され、首都アクラでは1月の平均気温が26.7℃、7月が25℃、年間降水量が724?である。
 ガーナは、地勢上概ね次の4地帯に大別される。

 1.海岸線沿いの低い砂浜地帯。
 2.海岸から約90?奥地までの草原・叢林地帯。
 3.西部国境付近とアシャンティ南部270?付近に広がる熱帯森林地帯。
 4.北部および東部の乾燥サバンナ地帯。

 ガーナは、92年4月に新憲法草案が国民投票で承認され、5月には、政党法発効で複数政党制が導入されている。
 96年12月には、大統領・国会議員選挙で与党が勝利し、政情は安定している。
 ガーナの経済は、1957年の独立当初は森林や鉱物資源に恵まれ、金、ココア等の輸出により西アフリカ諸国の中でも裕福な国であった。
 しかるに、66年以降の数度に及ぶ軍事クーデターとそれに伴う政情不安および暫定国家防衛評議会(PNDC)政権による一時的な社会主義志向型経済政策の実施によって、経済情勢は悪化の一途をたどることになった。
 このため、PNDC政権は83年より、IMF、世銀の協力を得て「経済復興計画(ERP)」の採用を決定し、経済構造調整政策に基づく経済の自由化路線を推進してきた。
 経済構造調整計画による経済自由化政策により、80年代後半から5%近い経済成長を続けている。
 ただ、近年は経済構造調整計画に伴って生じた課題を解決するため、現在、「構造調整の社会コスト緩和計画」を実施中である。
 貿易収支では、1989年から96年の8年間では、91年以外は全て出超となっている。
 96年の貿易赤字額は、14億8,400万ドルで、近年では最も多額である。
 国内総生産(GDP)は、96年63億4,000万ドル、同伸び率は5.0%を記録している。消費者物価上昇率は34.0%で、95年の約2分の1となっている。
 ガーナのGDPの産業別構成(96年)は、農水産業42.5%、鉱・工業16.6%、サービス業40・2%となっている。
 同国の経済は、他の西アフリカ諸国と同様に農業生産と輸出に依存するモノカルチャー経済である。
 農業部門は全労働人口の約60%を雇用し、GDPへの寄与率も40%を超えている。
 農作物には、カカオ、トウモロコシ、米、コーヒーなどがある。
 特に、世界的にも屈指のカカオの生産がガーナ経済を支えている。
 しかし、カカオの生産は71年の47万トンをピークとして年々減少している。
 このため、政府は買上げ価格の引上げ、老朽したカカオ樹や病木の植替え、殺虫剤の配給、輸送設備の改善など、あらゆる手段を講じて増産に努めている。
 カカオ以外の農産物としては、コーヒー、オイルパーム、ココナツなどの改良品種が大規模に栽培されており、南西部地方では特にゴムの栽培が盛んである。
 南部および中部地方では、トウモロコシ、米、カサバ、バナナ、オレンジ、レモン、落花生などを産出している。
 農業の多様化を図るため、ケナフ麻、綿花、タバコ、パームオイル、マンゴー、砂糖きび等、国内工場向け原材料の生産に力を入れている。
 さらに、胡椒、生姜、パイナップル、アボガド、その他柑橘類など輸出向換金作物が国内の広範囲にわたって栽培されている。
 家畜飼育では、山羊(215万頭)、羊(175万頭)、牛(97万頭)のほか、馬、豚、家禽類などである。
 林業および鉱業は、ガーナ経済にとって重要な産業である。
 輸出総額(94年)に占めるシェアーは、金が43.1%、木材が17.6%を占め、この2つで輸出総額の60%を超えている。
 林産物では、熱帯性硬材黒檀、マホガニー、チークなどは家具および建築材料として輸出されている。
 鉱物資源としては、金のほか、ダイヤモンド、マンガン、ボーキサイト、アルミニウムなどがある。
 近年、金輸出の比重が高まり鉱業部門が躍進している。
 特に、金の輸出額がカカオに逆転して、大差の首位となっている。
 ガーナは1957年の独立後、農業の振興、天然資源の開発など伝統産業の発展を図るとともに、工業化政策の推進に力を入れている。
 現在、ガーナ工業の主要部門は、1967年設立のGhana Industrial Holding Corporation“GIHC"が統轄管理している。
 この部門では、製鉄、製紙、煉瓦製造、塗料製造、製薬、電子工業、金属工業、缶詰工業、アルコール醸造、ココア加工、食肉加工、製糖、履物製造、繊維工業、ゴム製造、セメント製造、植物油製造などがある。
 これらの工業は、主としてテマ港の周辺に集中され、テマ工業地帯を形成している。
 また、政府が大きな期待をかけて試掘を続けているものに海底油田の探査活動がある。
 1983年には、国営石油公社(NPC)を設立し、外国石油開発会社との協定以外の鉱区における油田開発を行っている。

 

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