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(1)一般事情
 エジプト・アラブ共和国は、1922年2月独立国家となった。
 その国土面積は、100万1,449k?(日本の約2.65倍)、領海の幅は12海里である。
 人口は6,140万人(1997年6月現在)で、首都をカイロ(人口80万人)におく。
 言語はアラビア語が公用語で、英語、フランス語が比較的通じる。
 宗教は、90%がイスラム教と(ほとんどがスンニ派)、他にコプト教徒、キリスト教徒などがいる。
 人種は、アラブ系エジプト人が98.5%で、その他にヌビア人、スーダン人などがいる。
 エジプトは、アラブ諸国やPLOとイスラエルとの平和交渉において仲介的リーダーシップを果たしている。
 国内的には、93年10月ムバラク大統領が三選(任期6年)され、95年11月の総選挙では与党が圧勝している。
 但し、政府とイスラム原理主義過激派との対立が、重要な外資獲得資源である観光産業に打撃を与えることもあり、この対策が課題となっている。
 特に、97年11月にはエジプト南部の観光地ルクソールで武装したイスラム集団による外国人観光客襲撃事件が発生し、日本人11人を含む250人の大量死傷者が発生している。
 当分、外国人観光客の足が、この国から遠ざかることは確実であり、慢性的な国際収支難にあるエジプトにとって、観光収入は貴重な外貨資源であり、観光客はようやく増加傾向にあっただけに、エジプト経済にとって手痛い打撃を与えることになる。
 中東最大の人口を抱えるエジプトは長期間、社会主義経済運営をしてきたが、高い人口増加率と経済開発の遅れから、いまだ農業国の域を脱し切れない現状である。
 エジプトの経済は、ここ数年間順調に推移してきたが、前述のルクソール事件により観光客の激減に伴う観光収入が大きく落ち込み、加えてアジア通貨危機や原油の国際市況の低迷によりスエズ運河収入も落込みが予想されている。
 また、農業国でありながら穀物は自給できず、主要穀物を輸入に頼らざるを得ない状況である。
 この結果、国際収支面で安定が崩れ、巨額の対外債務を抱え、経済援助を外国に依存するパターンから脱出できないでいる。
 96年のエジプトの経済は、経済改革の推進が効を奏し、堅実な伸びを示し、同年の国内総生産(GDP)成長率は、94年の3.8%、95年の4.6%を上回る5.1%を記録し、失業率、インフレ率、財政赤字も縮小傾向にあり、同国のマクロ経済指標は着実に改善しつつある。
 GDPを産業部門別にみると、農林水産業が17.9%、鉱工業が26.9%、サービス業が55.1%となっている。
 エジプト経済の基幹となるべき農業部門のシェアーは、近年相対的に後退しているが、それでもGDPへの寄与率約18%と高く、また産業部門別の就業人口が最も多く、全体の30%(96年)を占めている。
 かつては綿花、米など農産物が輸出の主力であったが、石油の輸出余力が生じて以来、農産物にかわり、石油の比重が年々増大し、96年には石油・石油製品は、輸出総額の42.4%を占めるに至った。
 エジプトの耕地面積には限りがあり、国土面積全体の僅か6.5%が開墾されているに過ぎない。
 現在、農耕地1,120エーカーのうち、502エーカーは主として綿花、ジャガイモ、米、小麦、ゴマ、大豆、砂糖きび、トウモロコシ、玉葱、落花生などを生産している。
 これら農産物のうち、生産量の伸び率が人口の急増を下回る作物もあり、これが食糧品輸入増による外貨負担の要因となっている。
 国内食料需要の50%以上を輸入に依存しており、主食の小麦および小麦粉の輸入は、95年輸入総額の11.7%に達している。
 鉱・工業部門は、95年GDPの26.9%を寄与し、うち石油部門が9.4%を占めている。
 エジプトにおける大規模企業の殆どは国営であり、国営製造業は工業生産全体の70%近くを占めている。
 民間部門の製造業は、主として食品加工業と織物工業であり、従業員50人以下の中小企業が約15万ある。
 主な製造業の部門別生産は、車輌、家電製品、鉄鋼品などである。
 エジプトはエネルギー資源に恵まれている。
 石油、天然ガスの産出に恵まれ、火力・水力発電能力もかなりある。
 電力供給は、主としてアスワン・ハイダムなどの水力発電に対する期待が長く続いていたが、電力需要の急増に加え、ナイル川の水位低下による発電量減少が重なり、水力よりも将来は天然ガスによる発電が期待されている。
 2,000年には、エジプトの需要電力の90%近くが、天然ガスにより賄われるものと予想されている。
 エネルギー源としての天然ガスは、近年地中海沿岸および沖合のナイルデルタとアレキサンドリアの南西部の西部砂漠地帯でガス油田が相次いで発見され、過去2年間で20の油田が発見されている。
 97年1月現在の確認埋蔵量は、5,800億?で、推定埋蔵量は1兆?以上であるので、2010年の国内需要予想310億?に対しても、十分な輸出余力がある。
 イスラエル、トルコ、イタリアヘの天然ガス供給が政府間で合意されている。
 将来は、石油に代わる安定した輸出品として期待されている。
 エジプトの石油産出量は、77年から急速に伸びており、85年には88万バレル/日に達しているが、埋蔵量は37億バレル(96年6月推定)と比較的少なく、あと11年くらいで枯渇することになる。
 現在は、日産約90万バレルのうち、17万バレルが輸出されている。
 鉱業は、燐鉱石、鉄鉱石などが産出されている。

 

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