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〈スロップタンクからの排出〉

 油性汚水の静置と水切り作業は、油濁防止上最も注意を必要とする作業であり、32頁の表「タンカーからの貨物油を含む水バラスト等の排出基準」に従って排出しなければなりません。また、各操作のタイミングが重要で、ポンプ停止あるいはバルブ閉鎖のわずかな遅れでも海に大量の油が流出する場合があるので、相当の知識と技術を必要とする作業です。スロップタンクで油/水分離を行う場合、全汚水の静置を同時に行うのが効果的です。貨物艙の洗浄汚水、ダーティバラスト、パイプライン洗浄汚水を発生するたびに静置のうえ水切りを行うのは、油/水分離効果の点からは好ましくありません。スロップタンクの容積によっては、全汚水を同時に処理することは不可能であり、それぞれを分けて処理しなければならないことが考えられますが、この場合も前頁(6)に述べたように、次の汚水を回収するだけの容積を水切りにより確保するにとどめ、極端な水切りは行わない方がよいでしょう。
 水切りを開始する前に、正確な油水境界面の位置とアレージを計測し、油層の厚さを求めておかなければなりません。また、油水境界面の断面は一様でなく10センチほどの凹凸があるものと考えられます。そのため、スロップタンクからの排出は、エマルジョン層の船外への排出を防止するため、測定した境界面に達する前に余裕をもって中止します。
 スロップタンク内の水分をできるだけ多量に排出する努力は必要ですが、本来の目的は油性汚水を海に排出しないようにすることが主眼でありますから、細心の注意が必要であり、船外への排出に際しては厳重にチェックしなければなりません。
 この場合も、渦巻現象や堰止め現象(weir effect)により表面の油分を吸引しないよう、またスロップタンク内の攪乱はできるだけ生じないようにしなければなりません。油水境界面がタンク底部の構造材の高さに近づくときは、特に注意が必要です。
 以上のことに注意しながら、次のような手順を遵守して下さい。

 (1) 水位がスロップタンクの深さの約15パーセントになるまでは、低速度でメインポンプ1台を使って排出する。
 (2) メインポンプを停止し、油水境界面の位置としてアレージを計測し、残水の深さを計算する。
 (3) 次にストリッピングポンプを使用して、スロップタンクの大きさと構造を考慮してあらかじめ決定しておいた油の排出のおそれがある水位になるまで、スロップタンクからの排出を行う。最初のうちは通常の排出速度で行ってもよいが、この水位に近くなれば速度を落とさなければならない。そして、ストリッピングポンプのドレンコックを開き、その水に油の痕跡があるかどうか、視認あるいは計器によってチェックする。
 (4) もし、この水位に達する以前でも油を認めたならば、ポンプを停止する。
 (5) このような場合には、(3)及び(4)の過程を繰り返す前に、できるだけ長時間さらに静置しなければらない。
 (6) このあらかじめ定めておいた水位以下には、決して水切りしてはならない。

〈クリーンバラストの排出〉

 クリーンバラストは、海面より上の位置から排出しなければなりません。ただし、排出する直前に当該バラスト中の油分の状態を確認したうえ排出する場合は、海面より下の位置に排出することができます(船舶が港及び沿岸の係留施設以外にある場合にあっては、ポンプを使用することなく排出しなければなりません)。
 タンクが良く洗浄されており、ライン洗浄が完壁であるならば、バラスト排出時に漏油は生じないはずです。念のために、船が陸岸から50海里をこえる海域にある間に、クリーンバラストの排出に使用する予定のラインやポンプは、徹底的に海ヘフラッシングしておく必要があります。それでもなお、バラスト排出口を監視しなければなりません。特にタンク底部をさらえるときが最も油が出やすいものです。もし油が認められた場合には、バラストの排出を直ちに中止し、その残りはスロップタンクヘ移送しなければなりません。
 他に注意すべきことは、ダーティタンクのバルブがしっかり閉っていない場合、バラスト排出時にそのタンクヘ水が入ってしまうことです。ダーティタンクへ一度入った水は油分を含んでいるため、船外へ排出できずスロップタンクヘ回収することになり、時間的余裕もなく積荷に支障を来すことになります。
 バラスト排出時、バルブの操作ミスで上記のごとき事態を起こさぬよう、使用禁止のバルブはシールしておくべきです。
 また、バラスト航海中、空のタンクもしばしば点検してバルブのゆるみ、その他によるダーティタンク内への漏水に注意しなければなりません。

 

 

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