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〈洗浄時における油濁防止上の注意事項〉

 洗浄作業中は、一般的な注意のほかに、油濁事故防止のため特に次の諸点に注意する必要があります。

 (1) 洗浄汚水の適正な処置
 油性汚水は、スロップタンクに集め静置して油分と水分に分離する必要があります。従って、汚水が直接船外に排出されないよう作業関係者に周知し、誤操作を防止するとともに、関係パイプライン及びバルブの点検を行わなければなりません。

 (2) スロップタンクのオーバーフロー防止
 綿密な計画を立てることにより、スロップタンクのオーバーフローを防止することは可能ですが、洗浄時間・洗浄水圧力の計画値との差異により、汚水量が予想以上に増加することがあります。このためスロップタンク内の液面位の監視を十分に行うとともに、汚水の増加に伴う予備タンクの用意など、あらかじめ対策を講じておく必要があります。


〈ダーティバラストの処理〉

 ダーティバラストは油性汚水であり、これの排出は、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律第4条第3項に基づき定められている水バラスト等の排出基準(32頁「表2-3タンカーからの貨物油を含む水バラスト等の排出基準」を参照)に従って行う必要があります。セットリングが十分に行われた場合、ダーティバラストの上部に油層ができます。その下層の水分は、できる限り船の動揺の少ない時を選んで、次の手順に従って処理します。
 (1) 必要に応じ、メインライン及びポンプをダーティ・バラスト・タンクヘフラッシングする。
 (2) バラスト水の排出を開始する。
 (3) タンク内の水位がタンク深さの約15パーセントになれば、タンクからの排出速度を落とす。
 (4) 渦巻現象や堰止め現象(weir effect)により表面の油が吸引されないようポンプの速度を落とす。
 (5) 油の流出を生ずるおそれがある水位まできたら、そのタンクの排出を中止する。全タンクがこの水位まで排出されたら船外への排出は終了する。
 (6) この段階で担当者は、ダーティバラストの残量がスロップタンクに収容可能かどうか確かめなければならない。もし余積が不足するときは、油層の下に適当な水の層が残るよう注意しながら、必要な容積ができるまでスロップタンクの水分を一部排出してもよい。
 (7) 次に、ストリッピング系統を使用して、残りのダーティバラストをスロップタンクヘ回収する。


〈ポンプルーム、ビルジ水の処理〉

 ポンプルームのビルジ水には、相当量の油分が含まれていますので直接船外に排出してはいけません。
 貨物艙の洗浄に引き続き、ポンプルームのビルジ水及びストリッピング系統に接続する他のビルジをスロップタンクに回収し、貨物艙の洗浄汚水と同時に処理するのがよいでしょう。


〈パイプラインの洗浄〉
 パイプラインの洗浄(関係ポンプも含めて)は、クリーンバラスト排出時の油濁事故防止上最も重要なことです。
 貨物艙がいくらきれいに洗浄されていても、バラストを排出するパイプライン、ポンプの洗浄が不十分であれば、バラストの排出に伴い必ず油が船外に流出します。このためパイプラインの洗浄を行うにあたっては、綿密な洗浄作業計画を立て、関係パイプラインの洗浄に不備のないよう努めなければなりません。

 (1) 作業計画
 パイプラインの洗浄を行うにあたっては、配管図を検討の上、洗浄経路、洗浄時間及び洗浄順位を決定します。
 実際のバラスト排出作業には、1〜2系統のパイプライン及びポンプが使用されるだけですが、洗浄はできるだけ多くのパイプラインについて行っておくのがよいでしょう。

 (2) 洗浄作業
 パイプラインの洗浄は、揚荷終了後、ダーティバラストを漲水する際、できるだけ行っておけば便利です。パイプラインの洗浄には比較的多量の洗浄水が必要であり、スロップタンクヘの回収作業、油/水分離作業との関連により、汚水量を極力少なくすることを考える必要があります。
貨物艙の洗浄が終了したら、クリーンバラストを漲水する前に、再度、洗浄を行い、艙内にパイプライン内の残油が入らないようにしなければなりません。
 洗浄したパイプライン系統は、ダーティバラストの排出には使用しない方が良いでしょう。使用しなければならない場合は、使用後に洗浄を行い、汚水はすべてスロップタンクに集めて処理しなければなりません。

 

 

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