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 また、船舶の海難等によるものは、全体の海洋汚染発生確認件数の中に占める比率はそれ程高くはないが、平成元年3月のアメリカ・アラスカ州におけるエクソン・バルディーズ号の座礁・原油流出事故や平成9年1月の日本海におけるナホトカ号の折損・油流出事故等にみられるように、一旦事故が発生すれば、汚染の規模が大きく、海洋環境に与える影響が極めて深刻なものとなるので、これらを防止するため船舶、陸上施設にかかわらず日常の整備点検の励行、航行安全対策の推進等が必要となってくる。
 ここで、油による海洋汚染の中で多くを占めている取扱不注意による油排出事故はどのような状況で発生し、その不注意の内容としてはどのようなものが多いか、船舶からの油排出事故を中心に述べてみる。船舶からの油による海洋汚染293件のうち、取扱不注意による油排出事故は95件、約32%を占めており、油排出事故発生時の状況を作業態様別・原因別にとりまとめたのが第1表である。

第1表 取扱不注意による油排出事故の作業態様別・原因別状況(平成9年)

 船舶からの取扱不注意による油排出事故では、燃料油取扱作業中のミスによるものが最も多く、54件と全体の約半数を占めており、この中で補給作業中のミスによるものが35件、約37%、また、移送作業中のミスによるものが19件、約20%となっている。このほか、ビルジ取扱作業中のものが18件、約19%などが目立っている。
 船舶からの取扱不注意による油排出事故のうち、貨物油取扱作業中のものは、2件、約2%と全体に占める割合は低くなっているが、一度事故が発生すれば、大量の油が排出されることが多く、水産動植物等に対して直接被害を及ぼす等、海洋環境に与える影響が大きいものともなる。
 なお事故原因の状況をみてみると、そのほとんどが初歩的なミスによるものであり、燃料油取扱作業中の事故では、タンク油量の計測不適切によるものが25件、約46%と最も多く、次いでバルブ操作の不適切によるものが16件、約30%となっており、このほか、ポンプ操作不適切、関連機器点検整備不十分等が挙げられる。ビルジ取扱作業中では、バルブ操作の不適切によるもの及び関連機器点検整備不十分によるものがそれぞれ6件、約33%と最も多く、このほか計測不適切等が挙げられる。
 陸上からの油による海洋汚染は、第3図に示すとおり2件発生している。

 

 

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