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6.伊良湖水道付近海域の特性および今後の検討課題

6.1 伊良湖水道付近海域の特性

伊良湖水道は伊勢湾口の伊良湖岬と神島との間にある水道で、外海から伊勢湾および三河湾に入る最良の水道である。同水道内の東側には、朝日礁、西側にはコズカミ礁などがあり、ほぼ中央部に海上交通安全法により定められた伊良湖水道航路がある。年間を通して北西の風が卓越しており、10m/s以上の強風の出現率は冬期に約34%と高くその風向は西北西、北西が多い。潮流は北西・南東へ流れ、最強流は南東流2.7ノット、北西流2.1ノットである。霧は春に多く発生し、視界1海里以下になることもある。また、数メートルのうねりが南方から来ることがあり、船舶の運航には厳しい海域である。
伊良湖水道は1日約1,000隻、伊良湖水道航路は1日約300隻の船舶が航行しており、特に他の海上交通安全法の狭水道に比べ、漁船の航行および操業が多い海域である。また、管制船舶の通航も多く、巨大船の通航割合が多いのが特徴である。伊良湖水道航路を航行する船舶は03時〜06時に北航、17時〜20時に南航のピークがある。
平成5年〜9年の伊良湖水道付近における衝突および乗揚げ海難は、5年間で要救助海難が9隻、不要救助海難が22隻、合計31隻発生しており、約9割が衝突である。海難原因として見張り不十分、操船不適切が多い。
また、伊良湖水道航路においては「2. 伊良湖水道航路の航行管制等の現状」に述べた航行管制が行われており、現状の航行管制および航行環境について下記の?〜?が指摘されている。

? 朝夕のラッシュ時等巨大船が集中する場合、巨大船に対して相当の航路入航予定時刻の変更を指示することがある。
? 巨大船が連続して航行する場合、待機する準巨大船(長さ130m以上の巨大船以外の船舶)が航路入口付近で集中することがある。
? 準巨大船に対する管制信号の開始は、巨大船の実際の運航時間ではなく、タイムスケジュールに沿って入航予定時刻の20分前から実施しているため、場合によっては入航可能な準巨大船を待機させることがある。
? 巨大船が反航する場合、航路入航予定時刻は45分間隔で指示されているが、航路入航予定時刻間隔を短縮することが可能な場合がある。
? 伊良湖水道航路内で遊漁船、一本釣り漁船等が、巨大船等が航路に入航していても操業を継続していることがある。

伊良湖水道付近海域は以上のような特性があり、自然環境が厳しく、海上交通が輻輳する海域である。
海上交通が輻輳する東京湾、大阪湾等においては既に海上交通情報機構が整備されており、各海上交通センターでは情報提供および海上交通安全法に基づく航路の航行管制が行われている。この情報提供と航行管制は、通航船舶の衝突、乗揚げ事故等の減少に大きな効果を上げていることから、伊勢湾においても既存のものおよび海域の特性を踏まえた海上交通情報機構を整備することが望まれる。

 

6.2 今後の検討課題

本年度は、伊勢湾(伊良湖水道)の船舶交通環境および航行情報等の現況調査、通航者の意識調査を行い、海域の特性等について整理した。今後、伊勢湾(伊良湖水道)における海上交通情報機構の整備に向けて、さらに下記事項について検討する必要がある。
また、名古屋港では港内における船舶航行の安全を図るために、「名古屋港海上交通センター」において港則法に基づく航行管制を実施しており、伊勢湾(伊良湖水道)における海上交通情報機構の検討に当たっては「名古屋港海上交通センター」との関係について考慮する必要がある。
なお、海上交通情報機構の機能(ハード)については平成10年度に「伊勢湾海域海上交通情報機構機能等調査検討委員会:日本航路標識協会」において検討されている。

(1) 通航者の意識・ニーズ
本年度実施した通航者へのアンケート調査結果を詳細に解析し、通航者の意識、ニーズについて整理する。

(2) 航行管制
海上交通情報機構が整備されることを前提とした伊良湖水道航路の航行管制のあり方、準巨大船(長さ130m以上の船舶)の取り扱い、航路入航間隔、航路入航制限等について検討する。

(3) 情報提供
海上交通情報機構において収集、提供すべき情報の内容、提供の方法等について、海域の特性、通航者のニーズ等を踏まえて検討する。また、外国船が増加していることから、外国語による情報提供についても検討する。

(4) 海上交通情報機構
上記(1)〜(3)の検討結果から、伊良湖水道付近航行船舶の衝突、乗揚げ等の海難を未然に防止し、航行安全と効率的な運航の確保および海洋環境の保護に資する海上交通情報機構の機能(ソフト)のあり方について検討する。

 

 

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